2020年01月22日

保険の営業マンは自らが推奨する人気商品に、加入していないという矛盾

令和元年(2019年)7月14日のマネーポストWEBを読んでいたら、生保社員200人に「加入している死亡保険」アンケート 最多は「入っていない」と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『保険会社は、社員の高額な給料や、テレビCMに登場する有名タレントのギャラ、商品の販売・宣伝のための経費などを、集めた保険料から支払っています。

だから、なるべく高額な保険料を集めて、そこからガッポリと手数料を取りたいわけです。つまり一般論では、辣腕の営業マンが、自分がすすめる商品に入っていないというのは、ある意味で当たり前なんです」(新垣さん)

実際、今回行った保険会社勤務200人に対するアンケートでも、「入っている死亡保険を教えてください」という質問に対し、最多の回答(24人)は「自分は何も入っていない」というものだった。

理由の中には、「家の事情でお金が必要で最近解約した」(32才女性)という切実な声や、「万が一のための備えは『貯蓄』の方が効率的」だったり、「資産を貯めるなら、保険以外の方法のほうが割がいい」といった合理的な意見も散見された。冒頭とは別の大手生保会社社員が声を潜める。

「長く仕事をしていると、手数料や更新料で会社が儲かる仕組みもわかってしまうし、一度入ると解約しづらいのは経験上よく知っています(笑い)。

貯蓄型であっても、手数料を考えたら銀行の定期預金の方が得する場合も多いし、定期的な『特約をつけませんか?』という営業を断るのも煩わしい。まあ、自分もやっているのですが…」』

以上のようになりますが、この記事に関する感想を書いてみると、次のような3つになります。

(1)保険会社の社員でも1割くらいは、死亡保険に加入していない
この記事を読んでいて最初に気になったのは、「入っている死亡保険を教えてください」という質問を、保険会社に勤務する200人の社員にしてみたところ、最多の回答(24人)は「自分は何も入っていない」だったという点です。

200人のうちの24人ですから、1割くらいは死亡保険に加入していない事になります。

このデータを初めて見た時、お客さんに入れと言っておいて、自分は入ってないのかい!と、突っ込みたくなりました。

ただ生命保険文化センターが行った調査によると、平成30年(2018年)度における、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は、88.7%だったそうなので、1割くらいは生命保険に加入していないのです。

そうなると保険会社の社員の1割くらいは、死亡保険に加入していないというデータは、特に低いという訳ではなく、日本人の平均と同じくらいになります。

自爆営業(自社の商品を自分で購入する)などにより、保険会社の社員の加入率は、日本人の平均より高いと思っていたのですが、それほど大きな違いはないようです。

(2)営業マンが推奨しない不人気商品を、あえて選んだ方が良い
この記事を読んでいて2番目に気になったのは、「辣腕の営業マンが、自分がすすめる商品に入っていないというのは、ある意味で当たり前なんです」という部分です。

なぜ入っていないのかというと、保険料が高いうえに、手数料をガッポリ取られるからのようです。

この部分を初めて見た時、自分が欲しくないと思うような商品を、お客さんに推奨するんじゃないよ!と、突っ込みたくなりました。

ただ保険会社は商売でやっているのですから、お客さんが損をして、自分達が得する商品を推奨するのは、やむを得ない事だと思います。

また逆に考えれば、辣腕の営業マンが推奨しない不人気商品を選べば、良い生命保険に加入できる事になります。

その代表的なものは、勤務先やその労働組合などを通じて加入できる、団体保険(例えば団体定期保険)ではないかと思います。

この団体保険から支払われる保険金と、社会保険から支払われる保険給付をしっかりと把握し、それでもまだ保障が足りないと思った時点で、辣腕の営業マンから話を聞けば良いのです。

(3)貯蓄型の生命保険は定期預金より、お金が貯まらない場合がある
この記事を読んでいて3番目に気になったのは、死亡保険に加入しない理由について、「資産を貯めるなら、保険以外の方法のほうが割がいい」と説明する、保険会社の社員がいるという点です。

また「貯蓄型であっても、手数料を考えたら銀行の定期預金の方が得する場合も多い」と主張する、保険会社の社員もおります。

要するに手数料の分だけ損をしているので、貯蓄型の生命保険は定期預金より、お金が貯まらない場合があるのです。

これらを初めて見た時、保険以外の方法のほうが割がいい、または定期預金の方が得するなら、貯蓄型の生命保険を買わせようとするなよ!と、突っ込みたくなりました。

ただ消費者側も掛け捨て型の生命保険より、貯蓄型の生命保険を積極的に選んでいるのですから、保険会社の社員だけを責める事はできないと思います。

また(2)と(3)を総合して考えると、勤務先やその労働組合などを通じて加入できる団体保険に加入して、保険でお金を貯めるという発想を止めるのが、お金が貯まる秘訣かもしれません。
posted by FPきむ at 20:45 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月01日

「毎月分配型投信」や「健康祝金付き医療保険」と、縁が切れない理由

令和元年(2019年)12月4日のNIKKEI STYLEを読んでいたら、毎月分配型、残高減少に歯止め 高齢者のニーズ根強くと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『毎月分配型投信の人気低下に歯止めがかかっている。純資産残高は2019年10月末時点で約23兆円と15年5月に記録した直近ピークの43兆円に比べほぼ半減したが、ここ1年近くは22兆〜23兆円の水準を維持している。

海外REIT(不動産投資信託)型など足元で資金流入に転じる例も出始めた。

毎月分配型投信は組み入れ資産の収益以上の分配金を出すことが多いため、金融庁が「長期の資産形成に向かない」と問題視し、販売会社も積極的な販売を控えたことから純資産残高はほぼ右肩下がりで減少していた。

ここにきて下げ止まっている背景には、年金だけでは生活費が不十分な高齢者を中心に定期的な分配金へのニーズが根強いことがあるとみられている』

以上のようになりますが、毎月分配型投信はもう数十年前から、FP(ファイナンシャル・プランナー)などの金融関係の専門家から、批判されてきました。

その理由のひとつとして、運用が上手くいかなかった時は、分配金を支払うために、元本を取り崩しているからです。

しかも分配金が支払われるたびに、手数料が徴収されるため、わざわざ高い手数料を支払って、自分が預けたお金を受け取っているのです。

また分配金を受け取らないで、それを再投資に回せば、更にお金が増えていくため、分配金を再投資する投信より、お金が増えにくいというデメリットもあります。

こういったデメリットが知れ渡った影響や、分配金の減少などにより、毎月分配型投信の純資産残高は、減少を続けてきたのです。

しかし冒頭で紹介した記事によると、ここ最近は純資産残高の減少が、下げ止まったようです。

実際のところ、モーニングスターのファンドランキングなどを見ると、毎月分配型投信が上位に登場しております。

この理由について冒頭で紹介した記事では、「年金だけでは生活費が不十分な高齢者を中心に定期的な分配金へのニーズが根強いことがある」と分析しておりますが、個人的には別の理由があると思うのです。

行動経済学によると人は、将来の大きな利益より、目の前の小さな利益を優先してしまう傾向があると言われており、こういった傾向は「現在志向バイアス」と呼ばれております。

例えばダイエットすれば、今より魅力的なスタイルになれるとわかっていても、目の前に美味しそうなお菓子があると食べてしまうのは、現在志向バイアスの影響だと言われております。

毎月分配型投信が人気を取り戻した理由のひとつは、この現在志向バイアスが関係していると思うのです。

つまり分配金を受け取らないで、それを再投資に回せば、将来に大きな利益を手にできるとわかっていても、すぐに受け取れる分配金が、魅力的に見えてしまうのです。

ところで一定期間に渡って、入院や手術などをせず、各種の給付金を受け取らなかった場合には、健康祝金(ボーナス、生存給付金)を受け取れる、健康祝金付き医療保険があります。

これについても毎月分配型投信と同じように、FPなどの金融関係の専門家から批判されてきました。

その理由として健康祝金が付いている医療保険は、これを支払うための資金を確保するために、健康祝金が付いていない医療保険より、保険料が高くなっているからです。

つまり健康祝金といっても、自分が支払ったお金を、自分で受け取っているだけなのです。

しかも上記の毎月分配型投信と同じように、健康祝金が支払われるたびに、手数料が徴収されております。

また入院や手術をして、各種の給付金を受け取った場合には、健康祝金を受け取れないため、これのために上乗せして支払ってきた保険料が、掛け捨てになってしまうのです。

それなら健康祝金が付いていない医療保険に加入して、健康祝金のために上乗せして支払うはずだった分は、自分で長期的に渡って運用した方が、お金が貯まると思うのです。

このように説明する金融関係の専門家は多いのですが、健康祝金付き医療保険を購入する方は後を絶ちません。

おそらく現在志向バイアスにより、数年後に受け取れる健康祝金が、魅力的に見えるのかもしれません。

そうなると毎月分配型投信と健康祝金付き医療保険は、不合理なものでありながら、なかなか縁が切れない金融商品だと思います。
posted by FPきむ at 20:41 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする