生命保険文化センターのサイトの中にある、「生命保険に加入している人はどれくらい?」というページを見ると、8割程度の方が何らかの生命保険に加入している事がわかります。
また「生命保険の保険料は年間どれくらい払っている?」というページを見ると、平均的に男性は年間で約24万円(1ヶ月で約2万円)、女性は年間で約18万円(1ヶ月で約1万5,000円)の保険料を、支払っている事がわかります。
その一方で「フィデリティ退職・投資教育研究所レポート(2013年5月発行)」を見ると、公的年金に対して不安があるのに、退職後の生活費として準備している金額は0円と回答した方が、4割程度もいる事がわかります。
これらを総合すると平均的な日本人は、死亡するリスクには過剰な準備をしているのに、長生きするリスクには、ほとんど準備をしていないと考えられます。
しかし法律で定める定年年齢の下限である65歳を迎えるまでに、ほとんどの方は死亡しないので、死亡するリスクより長生きするリスクの方が、多くの方にとって身近な存在なのです。
ですから死亡するリスクに備えるために使っている資金と、長生きするリスクに備えるために使っている資金の配分を、見直した方が良いと思うのですが、先日図書館で調べ物をしていたら、このような趣旨で書かれた本を見つけました。
それはこの見直しで保険料が1/3になる
『家計には収入と支出があります。かつて、収入が右肩上がりにどんどん伸びて、幾ら支出がかさんでもあまり心配のない時代が30年、40年続きました。
10年ぐらい前にそういう時代は終わりました。それどころか、減少したり突然途絶えたりしている家計も少なくないと思います…(中略)…
収入が増えているうちは両方に十分備えることも可能かもしれません。でも、いまのように収入が伸びない時代では、どちらか一方に重点を置くほうが良いように思われます。
早死にと長生きのどちらにより多く備えるか。現在では、確率的には長生きをする人のほうがはるかに多いことを考えると、長生きに優先的に備えるほうが賢明です』
また著者の野田さんは早死により長生きに備えるため、この見直しで保険料が1/3になる
・変額年金保険(もしくは「確定拠出年金」など)
・短期の定期保険(まずは会社の「団体定期保険」を検討して、なかったら一年ごとに保険金額の見直しができる「1年更新型定期保険」)
なお現在の主流は定期付終身保険の部分が、「定期保険特約付 利率変動型積立終身保険」、いわゆるアカウント型保険(8月4日のブログを参照)に変わるかと思いますが、あまり大きな違いはありません。
またこの組み合わせを見て気になった部分や、疑問に感じた部分を紹介すると次のようになります。
(1)医療保険(特約)は必要ないのか?
「変額年金保険+短期の定期保険」という組み合わせには、「定期付終身保険+医療・介護保険(特約)+個人年金保険」のように、医療保険(特約)が含まれておりません。
この理由についてこの見直しで保険料が1/3になる
『入院した場合でも、変額年金保険を解約するか、あるいは契約者貸付(4月14日のブログを参照)でお金をつくれば、それで十分医療費も賄えると思います。
変額年金保険は、全部解約だろうと、部分解約だろうと、解約は自由です。また、契約者貸付の利率もそれほど高くない』
(2)終身保険やアカウント部分で老後資金を準備できないのか?
定期付終身保険の終身保険や、アカウント型保険のアカウント部分は、貯蓄機能を備えているのだから、それで老後資金を準備できるという考え方もあります。
しかしこの見直しで保険料が1/3になる
『終身保険の場合、途中で死ぬ人のために保険金を払わなければいけないので、その保険料の中には個人年金保険の場合よりも明らかに掛捨ての部分が多く含まれています。
たとえば、1万円の保険料を払って翌日死んだら、その人に1000万円払わなければいけない。残りの999万円は、集めた保険料の中から払わなければいけないわけです。
このための保険料は、長生きした人にとってはほぼ掛け捨てになります。もちろん、その部分は年金の原資には回らない。
こう考えると、死亡保障がほとんどないと考えてよい定額型の年金保険ですらあてにならないのに、終身保険で老後資金をつくるというのはとんでもない話だということがわかると思います』
(3)なぜ定額より変額の方が良いのか?
年金額が定額の年金保険より、変額の年金保険の方が良い理由が、この見直しで保険料が1/3になる
その中で一番納得したのは次のような理由になりますが、日銀は現在大規模な金融緩和策により、インフレを誘発しようとしておりますので、時代の流れにも合っていると思いました。
『定額年金保険に比べて、変額年金保険のメリットの1つは、インフレによって資産価値が下がるという欠陥がない、あるいは小さいと言えることです。
定額の年金保険の場合、60万円とか、120万円といった調子で、契約のときに基本年金額がすでに決まっております。
ですから、インフレが起こって貨幣価値が下がったら、将来年金を受け取るときには、いまの60万円、120万円の価値はなくなる。貨幣価値の変動をあまり想定していないことが定額型の欠陥です』
以上のようになりますが、この本は今から15年前に発売されたので、著者の野田さんがおすすめする商品の部分などは、当時とは状況が変わっており、少し役に立たなくなっております。
しかし生命保険の見直しに対する心構えや、年代別の具体的な見直し方法などは、現在でも十分に役立つと思います。