2018年06月01日

「生命保険のカラクリ」は消費者の行動の、不合理性がわかる一冊



かなり前から気になっていた、生命保険のカラクリ(著:岩瀬大輔)という本を、購入して読んでみました。

この本はライフネット生命の社長、出版された当時は副社長だった著者の岩瀬さんが、生命保険の仕組み、生命保険会社の内部事情、賢い生命保険の選び方などを、わかりやすく解説しております。

個人的にもっとも興味をひかれたのは、この本が出版された平成21年(2009年)以降に、生命保険業界や生命保険ビジネスがどうなっていくのかを、著者の岩瀬さんが予想している部分です。

例えばタバコを吸わない方は、吸う方よりも保険料が安くなる、リスク細分型の生命保険が普及していくと予想しておりますが、確かにその通りになっていると思います。

またインターネットが普及していけば、消費者が生命保険に関する知識や情報、特に手数料に関する知識や情報を、以前よりも多く身に付けるようになります。

その結果として手数料に見合ったサービスなどを提供できない生命保険会社は、消費者から選ばれなくなるため、手数料が安くなると予想しておりますが、具体的には次のように記載されております。

『これから生保業界はどうなっていくのだろうか。現状がどうであれ、売り手である保険会社と買い手である国民との間に、大きな情報格差があることを前提としてきた既存のビジネスモデルでは、この先立ち行かないだろう。

インターネットやブロードバンドの普及による新しい情報化の流れは、ひとりひとりの消費者に多くの知識と情報を与え、個人が企業と対等に向き合う力をつける。

これからは、消費者の理解不足に頼った価格設定ではなく、対価にみあった付加価値を提供しなければ、淘汰されていくだろう。

具体的には、保険会社の手数料にあたる「付加保険料」を引き下げる方向へ向かうだろうと予想される』

以上のようになりますが、生命保険の契約者が支払う保険料は、保険金の支払いのために使われる「純保険料」と、生命保険会社の経費のために使われる、「付加保険料」で構成されております。

この本が出版される前にライフネット生命は、生命保険業界ではタブーとされてきた、付加保険料の比率を公開して話題になりました。

おそらくネット専業の生命保険会社であるライフネット生命は、営業職員の人件費などが他社よりも少ないため、付加保険料の比率の低さに自信があったのだと思います。

著者の岩瀬さんは上記にように付加保険料が、引き下げる方向へ向かうと予想しておりますが、ライフネット生命に追随して、付加保険料の比率を公開する生命保険会社は、今のところ現れておりません。

そのためこの予想が当たったのか否かは、残念ながら判別できない状態なのです。

また著者の岩瀬さんの予想が、外れたと感じさせる次のような文章が、生命保険のカラクリの中に記載されておりました。

『インターネットの普及による情報革命も、生命保険ビジネスのありようを根本的に変えつつある。

売り手と買い手の間の情報の格差によって生み出されていた保険会社の利潤が、どんどん小さくなり、消費者は賢く、合理的になっていく。

金融分野では投資信託を中心に、消費者の間で手数料に対する関心と感度が高まっている。

突き詰めて考えると、どこか一社の商品がずば抜けて「得」ということではなく、十分に効率的な市場の下では、金融商品を差別化する要素は、手数料と税金しかない。

従来は必ずしもあたり前ではなかったそのような知識も、ネットの普及などにより、消費者に少しずつ常識となりつつある』

以上のようになりますが、予想が外れたと考える理由としては、販売手数料が非常に高い外貨建て保険が、現在でも売れているからです。

金融庁は高額な販売手数料を得るため、銀行などが顧客ニーズを無視して、外貨建て保険を販売していると考え、消費者を保護するために、販売手数料の開示を求めました。

こういった販売手数料に関する情報や、外貨建て保険は将来の為替相場によっては元本割れする可能性があるという情報は、インターネットで検索すればすぐに見つかります。

ですからインターネットを活用すれば、消費者は合理的な行動が簡単にできるのですが、このように販売手数料で損して、将来的に元本割れするかもしれない外貨建て保険を購入するという、不合理な行動をしているのです。

まったく理解できないのですが、生命保険のカラクリの中には、この理由を考える時のヒントになると思われる、次のような文章が記載されておりました。

『かけ捨て型の医療保険と、保険料を上乗せする代わりに、無事故で生存していた場合に事後的に「健康ボーナス」という形で保険料を返す、という二通りの保険を消費者テストで見せた。

たとえば、保険料を10万円払って保障のみを確保する保険と、保険料を20万円支払って、無事に満期を迎えたら10万円が払い戻される保険をイメージすればいい…(中略)…

お金の出入りだけでみれば、両者の間に損か得かはないことはすぐにわかるだろう。後者は、自分が多めに払い込んだお金を、後から返してもらっているだけだ。

むしろ、期間中にそのお金は使えないし、保険事故にあったり、亡くなった場合には払い込んだ保険料の部分は返却されないので、かえって不利だとも考えられる…(中略)…

結果は5対95。すなわちほとんどの人が、「あとから10万円もらえるほうがお得と感じた」と答えたのである。

消費者が必ずしも経済合理性だけで動かないことについては、「行動経済学」という分野で研究が進んでいるが、生命保険の分野では、このような「ボーナス」というものの不合理な人気の高さがその一つのあらわれだろう』

以上のようになりますが、つまり消費者は経済合理性だけで行動していないため、損をする可能性の高い外貨建て保険を購入するという、不合理な行動をするのです。

そのため金融商品を購入する前には、合理的に考えて損をする行動をしていないのかを、冷静に分析した方が良いと思うのです。
posted by FPきむ at 20:02 | 保険に関連する本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月01日

生命保険の「罠」はプロが加入している保険やプロの選び方がわかる一冊



数週間前に日本生命の営業職員だった後田亨さんが書いた、生命保険の「罠」という本を読みましたが、特に参考になったのは、第7章の「プロが入っている保険」です。

この第7章では著者の後田さんと、日本生命のセールスの女性や、乗り合い代理店の営業マンであるAさんとの対話の形で、プロが入っている保険や、プロの選び方が紹介されているのですが、特に気になった部分を紹介すると次のようになります。

(1)プロはグループ保険に加入して、保険料を安く抑えている
日本生命のセールスの女性は、上司たちがその当時の主力商品に加入していない事を突きとめ、「なぜ上司たちは自分が加入したいと思わない商品を、我々に売ってこいと言うのだろうか?」という、疑問を感じたそうです。

そこである上司に対して問い詰めたところ、次のような事実がわかったと、生命保険の「罠」に記載されておりました。

『数年前、日本生命のセールスの女性が、職場の上司たちが入っている保険について教えてくれました…(中略)…上司たちはバブル期に販売された高利回りの「養老保険」や「終身保険」と、会社の「グループ保険」などに入っているということでした』

『「グループ保険」というのは、企業や団体を通じて、従業員や構成員が入ることができる保険で、「万が一の場合に数千万円が支払われます」といった、シンプルな内容の商品だけを扱っているものです。

保険会社としては、「同じ保険を多数の人からまとめて募集できる」、つまり営業担当者が対面でコンサルティングしながら販売するわけではないので、販売手数料などのコストが抑えられる分、保険料が安くなることが多いのです。

したがって、「がんと診断された時から、保険料の払い込みが免除されます」などといった機能が付帯していることはないのですが、保険のプロである上司たちは、「だからこそ安い。この保険には、いろんな機能はいらない」と、納得して利用しているわけです』

以上のようになりますが、バブル期に販売された高利回りの養老保険や終身保険は、もう購入できないので、参考にならないと思います。

しかしグループ保険については、お勤めしている企業やその労働組合が取り扱いをしていれば、現在でも購入できますので、これは多くの方が参考になるはずです。

(2)プロは終身保険ではなく、収入保障保険に加入している
乗り合い代理店の営業マンであるAさんは、自分に万が一の事態が発生した時に備え、次のような保険に加入していると、生命保険の「罠」に記載されておりました。

『Aさんは、まず、万が一の保障を「期間限定」にしています。「一生涯続く保障」は求めないことにしています。「終身」ではなく「定期」というのは、そういうことです』

『Aさんは、このような考え方で、「定期保険」を選択していますが、なかでもコスト・パフォーマンスが高い「収入保障保険」に加入している点も注目です。

「収入保障保険」の特徴は、保険金の支払われ方にあります。今回の事例だと、保険が機能する期間は33歳から60歳までです。

したがって、その間にAさんに万が一のことがあった場合、60歳までの収入の代わりに、年間180万円の保険金が遺族に支払われます。

具体的には、33歳時点でAさんが亡くなった場合の保険金総額は「180万円×60歳までの27年間」で4860万円です。それが、50歳で亡くなったとすると「180万円×60歳までの10年間」ですから1800万円です』

『損保ジャパンひまわり生命は、「定期保険」の中でも保険料が安い「収入保障保険」について、タバコを吸わない健康体の人の保険料を、他社の同種類の商品より特に低く設定しています。利用しない手はないということだったわけです』

以上のようになりますが、一生涯の保障が続き、貯蓄性もある「終身保険」ではなく、保障が期間限定で、掛け捨て型である「収入保障保険」(10月26日のブログを参照)に加入している点は、意外に感じた方が多いのではないでしょうか?

また健康体割引(9月21日のブログを参照)を利用して、保険料を安く抑えているという点は、プロらしいテクニックだと思いました。

(3)プロは入院給付金より、診断給付金を優先する
乗り合い代理店の営業マンであるAさんは、医療保険については次のように、入院の日数に応じて支給される「入院給付金」より、診断時に一時金で支給される「診断給付金」を優先していると、生命保険の「罠」に記載されておりました。

『Aさんが加入したのは、東京海上日動あんしん生命の「メディカルミニ」という保険ですが、ここにも明確なこだわりが見えます。

それは、入院1日あたりの保険金よりも、大病にかかった場合に受け取れる一時金を優先しているということです。やはり、「貯金が間に合わない順に保険に入る」という姿勢が一貫しているわけです。

この保険からは、がんの診断時、急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態になった場合に300万円が支払われます』

『Aさんは、入院の際に支払われる保険金を1日5000円にしています。この設定は、今どきの「医療保険」の主流ではありません』

以上のようになりますが、このように入院給付金より、診断給付金を優先する理由についてAさんは、医療の進歩による入院の短期化などを挙げておりました。

(4)プロはお祝い金やボーナスが出る医療保険を選ばない
医療保険については次のように、お祝い金やボーナスが出るものは選ばない方が良いと、生命保険の「罠」に記載されておりました。

『10年間、病気やケガで入院しなかった場合、つまり保険のお世話にならなかった場合には、数万円程度の「健康お祝い金」などが出る商品もあります。が、Aさんは無視しています。正解だと思います』

『私も、「お祝い金」や「ボーナス」つきの保険に入って喜んでいる同業者には、会ったことがありません。本当に、「どこがお祝いなのか?」と言いたくなる商品であることに気づいていないのは、お客様だけです』

以上のようになりますが、Aさんはお祝い金やボーナスについて、「手元に置いておいたら、いつでも自由にできたはずのお金が、保険会社に拘束されて、ほとんど増えずに数年後に返ってくるだけ」と、とてもわかりやすい説明をしておりました。

こういった説明を事前に受けていたら、お祝い金やボーナスが出る医療保険を選ぶ方は、ほとんどいなくなってしまうのではないでしょうか?
posted by FPきむ at 19:47 | 保険に関連する本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする