2012年09月17日

労災保険や健康保険の保険給付と公的年金の調整

労働者災害補償保険(以下では労災保険で記述)の保険給付や、健康保険の傷病手当金(3月29日のブログを参照)が支払われている方に、同一の病気やケガによる公的年金が支払われる場合には、次のような調整が行われます(違う病気やケガが原因なら調整はありません)。

注:これ以降におきまして例えば、業務災害で支払われる障害補償年金と、通勤災害で支払われる障害年金をどちらも示す時は、「障害(補償)年金」と表記します。

(1)労災保険の保険給付
労災保険の保険給付と公的年金が、同一の病気やケガを原因として支払われる場合には、公的年金はその全額が支払われ、労災保険の保険給付は以下の調整率で減額されます。

■障害(補償)年金と公的年金の調整
【障害(補償)年金と障害基礎年金+障害厚生年金】
障害(補償)年金の支払額に、0.73を掛けて調整を行います。

【障害(補償)年金と障害厚生年金】
障害(補償)年金の支払額に、0.83を掛けて調整を行います。

【障害(補償)年金と障害基礎年金】
障害(補償)年金の支払額に、0.88を掛けて調整を行います。

■遺族(補償)年金と公的年金の調整
【遺族(補償)年金と遺族基礎年金+遺族厚生年金】
遺族(補償)年金の支払額に、0.80を掛けて調整を行います。

【遺族(補償)年金と遺族厚生年金】
遺族(補償)年金の支払額に、0.84を掛けて調整を行います。

【遺族(補償)年金と遺族基礎年金(寡婦年金も含む)】
遺族(補償)年金の支払額に、0.88を掛けて調整を行います。

■傷病(補償)年金と公的年金の調整
【傷病(補償)年金と障害基礎年金+障害厚生年金】
傷病(補償)年金の支払額に、0.73を掛けて調整を行います。

【傷病(補償)年金と障害厚生年金】
傷病(補償)年金の支払額に、0.86を掛けて調整を行います。

【傷病(補償)年金と障害基礎年金】
傷病(補償)年金の支払額に、0.88を掛けて調整を行います。

■休業(補償)給付と公的年金の調整
【休業(補償)給付と障害基礎年金+障害厚生年金】
休業(補償)給付の支払額に、0.73を掛けて調整を行います。

【休業(補償)給付と障害厚生年金】
休業(補償)給付の支払額に、0.86を掛けて調整を行います。

【休業(補償)給付と障害基礎年金】
休業(補償)給付の支払額に、0.88を掛けて調整を行います。

原則的には以上のように調整をしますが、公的年金の年金額が少ない時は併給よりも、労災保険の保険給付を単独で受給した方が、有利になってしまう場合があります。

このような場合には「調整前」の労災保険の保険給付額から、公的年金の年金額を引いた額が最低保障額になりますので、併給額がこれ以上低くなる事はありません。

なお休業(補償)給付と、公的年金を併給する場合の最低保障額は、「調整前」の休業(補償)給付の金額から、公的年金の年金額を365で割った額を引いて算出します。

ところで障害厚生年金(1〜3級)を受給できる程度の障害にない方が、一定の要件を満たした場合には、厚生年金保険から障害手当金が支払われますが、労災保険の障害(補償)給付(年金、一時金)を受給できる方には、障害手当金は支払われません。

また障害(補償)年金前払一時金が支払われ、障害(補償)年金が支給停止されている間は、障害基礎年金を受給できますが、20歳前の傷病による障害基礎年金は受給できません。

つまり同じ障害基礎年金でも、初診日(障害の原因となった病気やケガで、初めて医療機関に行った日)が20歳前にあるか否かで、取り扱いが変わるという事です。

(2)健康保険の傷病手当金
健康保険の傷病手当金を受給している方が、同一の病気やケガにより厚生年金保険から障害厚生年金を受給できる場合には、傷病手当金は受給できません。

ただし傷病手当金の保険給付額が、障害厚生年金の年金額(同時に障害基礎年金を受給できる時は両者の合計額)より多い場合には、その差額を受給できます。

また健康保険の傷病手当金を受給している方が、同一の病気やケガにより厚生年金保険から障害手当金を受給できる場合には、傷病手当金の受給額が障害手当金の金額に達するまで、傷病手当金は受給できません(障害手当金は年金ではなく一時金です)。

最後に会社などを退職した後、老齢厚生年金、老齢基礎年金、退職共済年金などの老齢年金を受給している場合には、障害厚生年金と同じような調整が行われます。
posted by FPきむ at 19:40 | 公的年金の知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月31日

病気やケガが悪化したら障害年金を請求できるか調べてみる

病気やケガになったら、まず近所の医療機関で診療を受けると思いますが、その病気やケガが悪化したら、仕事を休んで療養をする必要があります。

その期間中は健康保険から給与の約60%の、傷病手当金(3月29日のブログを参照)が支払われますが、1年6ヶ月という支給期間の上限があります。

また人口透析を受けなければならなくなったり、心臓ペースメーカーや人口弁を装着したりすると、それだけでも莫大な費用がかかり、給与の約60%の傷病手当金では、当然賄えなくなります。

こういった事態が生じてしまった場合に活用したいのが、国民年金や厚生年金保険などの制度から支払われる「障害年金」になりますが、次のような特徴があります。

(1)障害と認定される病気やケガの範囲は広い
障害年金はかなりの金額になりますし、国民年金の保険料の支払いが免除されるというメリットもありますので、そう簡単には障害と認定してもらえる訳ではありません。

ただHIV、ガン、脳腫瘍、肝硬変などの内臓疾患、躁うつ病や統合失調症などの精神疾患も、障害と認定される場合があり、障害年金の対象となる病気やケガの範囲は意外と広いので、もし病気やケガが悪化してしまったら、管轄の年金事務所で相談してみましょう。

(2)自営業は不利になる
会社員や公務員の方は障害等級の1級から3級に該当すれば、障害年金が支払われますが、国民年金に加入している自営業者の方は、障害等級の1級から2級に該当しなければ、障害年金は支払われません。

また会社員や公務員の方は、障害の状態が障害等級の3級未満の場合には、障害手当金(一時金)が支払われる場合がありますが、自営業者の方は障害等級の1級から2級に該当しなければ、障害に関する給付は何も支払われません。

なお上記の傷病手当金も、国民健康保険に加入している自営業の方には支払われませんので、自営業の方は会社員や公務員の方よりも、民間の医療保険の入院給付金を、多めに設定しておく必要があります。

(4)国民年金の保険料の納付要件
障害年金が支払われるためには、原則として初診日(病気やケガで初めて医療機関に行った日)の前日において、初診日の属する月の前々月までの加入すべき期間のうち、3分の2以上が保険料納付済期間、または保険料免除期間でなければなりません。

また特例として平成28年3月31日までに初診日がある場合には、初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの1年間に、保険料の滞納期間がなければ、保険料の納付要件をクリアーします。

ポイントは「初診日の前日において」という部分ですが、これは病気やケガをした後に、未納になっていた保険料を急いで納付しても、保険料の納付要件はクリアーできないという事です。

また3分の2以上の期間は保険料を納付した期間だけでなく、保険料を免除された期間でも良いので、保険料を納付する収入のない方は、きちんと国民年金の免除申請をしておきましょう。

(5)障害認定日の特例
障害年金が支払われるためには障害認定日において、障害等級の1級から3級に該当する必要がありますが、障害認定日とは初診日から、1年6ヶ月を経過した日になります。

また初診日から障害認定日までの間に症状が固定し、治療の効果が期待できない時は、その日を障害認定日としますが、この症状が固定する例としては、次のようなものがあります。

・人口透析を開始した時は、透析開始日から3ヶ月を経過した日

・心臓ペースメーカー、人口弁を装着した時は、装着した日

・人口肛門や人口膀胱を造設した時は、造設した日

・尿路変更術を施術した時は、施術した日

・人口骨頭、人口関節を挿入、置換した時は、挿入、置換した日

・肢体の外傷で切・離断した時は、切・離断した日

・在宅酸素療法を開始した時は、開始した日

・脳血管障害で、初診日から6ヶ月経過後に運動機能障害による症状が固定した時は、固定した日

(6)医師の診断書が認定のカギになる
障害年金の請求書に添付する、医師の診断書に記載されている内容が、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に該当すれば、1級から3級の障害年金が支払われます。

つまり医師の診断書に記載されている内容が、障害年金が支払われるか否かのカギになるという事です。

逆に言えば上記の認定基準に該当するような診断書を医師に書いてもらえば、障害年金が支払われる確率が上がるという事ですが、もちろん不正は厳禁になります。

またすでに医師の診断書をもらっている方は、上記の認定基準と照らし合わせれば、障害年金が支払われるか否かの目安がわかります。

以上のようになりますが、障害年金の金額や支給要件などについて詳しく知りたい方は、日本年金機構のホームページを参考にして下さい。
posted by FPきむ at 20:42 | 公的年金の知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする