2017年10月02日

健康保険組合の4分の1超が財政悪化により、2025年度に解散危機へ

平成29年(2017年)9月25日の時事通信を読んでいたら、健保、4分の1超が解散危機=25年度試算−健保連と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『健康保険組合連合会(健保連)は25日、大企業が社員向けに運営する健康保険組合の4分の1を超える380組合が、財政悪化で2025年度に解散危機を迎えるとの試算を発表した。

同年度に団塊の世代が全て75歳以上となり、健保組合が高齢者医療に拠出するお金が急増するため。健保連は負担軽減を求めている。

健保組合は全国に1399(16年度時点)あり、加入者は約2900万人。保険料は企業と社員が原則折半している。

試算では、健保組合の平均保険料率は15年度の9.1%から25年度に11.8%に上昇。

380組合の25年度推計保険料率は12.5%以上になり、中小企業の社員らが加入する「協会けんぽ」の保険料率を超える計算だ。

健保組合の保険料率が協会けんぽより高くなると、企業は自前で健保を運営する必要がなくなり、解散につながる。

協会けんぽの運営費には国費が投入されており、多くの健保が協会けんぽに移れば、国の財政負担も増える』

以上のようになりますが、ここ数年は社会保険に関連したニュースを見ていると、一元化の話題が多いように感じます。

例えば公務員などが加入する共済年金は、平成27年(2015年)10月から、会社員などが加入する厚生年金保険に統合されました。

これにより被用者年金制度(民間企業や官公庁などに、雇用されている方が加入する年金制度)は、厚生年金保険に一元化されたのです。

また自営業者などが加入する国民健康保険は、市区町村を単位にして運営されておりますが、平成30年(2018年)4月から、都道府県を単位にして運営される事が決定しております。

つまり市区町村が運営する国民健康保険は、それぞれの都道府県の中において一元化されるのです。

こういった時代の流れがあるため、主に大企業の従業員が加入する「組合健保(健康保険組合が運営)」のすべてが解散して、主に中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ(全国健康保険協会が運営)」に一元化されるのは、悪くないような気もします。

これに加えて380の組合健保は上記のように、協会けんぽより保険料が高くなると推計されているのですから、一元化されるのは悪くないどころか、良い事のように思えてきます。

しかし次のようなマイナス面があるため、国や組合健保は一元化に対して、慎重な姿勢を取っているようです。

(1)税金の投入が増える事によって生じる国の財政の悪化
協会けんぽの運営費には税金が投入されているため、すべての組合健保が解散して、協会けんぽに一元化されると、国の財政負担が増えてしまいます。

例えば西濃運輸の組合健保が解散され、協会けんぽに移った際には、新たに協会けんぽに対して、16億円の税金が投入されたと推計されているのです。

西濃運輸1社だけであっても、これだけの税金が投入されるのですから、すべての組合健保が解散して、協会けんぽに一元化された場合には、莫大な税金が投入されると考えられます。

(2)医療費が増える事によって生じる保険料の値上げ
厚生労働省が発表している統計によると、特定健康診査(メタボ健診)の平成23年(2011年)の実施率は、協会けんぽが36.9%なのに対して、組合健保は倍近い69.2%もあります。

この他にも組合健保は、様々な保険事業を積極的に実施し、病気やケガの予防に取り組んでおり、その結果として医療費が削減されるため、保険料の上昇が抑制されるのです。

こういった事情があるため、すべての組合健保が解散して、協会けんぽに一元化された場合には、医療費が増えてしまい、その結果として保険料が値上げされる可能性があります。

以上のようになりますが、(1)に関しては国が決める事なので、個人の努力ではどうにもなりません。

しかし(2)の「医療費の増加→保険料の値上げ」に関しては、個人の健康に対する努力が結集する事により、改善される可能性はあると思うのです。

そうなると健康保険組合が解散した後に待っているのは、健康な心身を作るための自助努力が、今まで以上に求められる社会ではないでしょうか?
posted by FPきむ at 20:35 | 公的保険の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月25日

平成28年(2016年)度の協会けんぽの決算は、黒字額が過去最高へ

平成29年(2017年)7月7日の毎日新聞を読んでいたら、協会けんぽ:黒字最高額に 16年度、4987億円と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『中小企業の従業員や家族が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)は7日、2016年度決算見込みが4987億円の黒字になったと発表した。

前身の政府管掌健康保険の時代を含め、記録が残る1992年度以降で最高の黒字額。景気回復による加入者増と賃金上昇で、保険料収入が増えたことが主な要因。

保険料などを積み立てた準備金の残高も08年度の協会けんぽ発足以来、最高の1兆8086億円となる見通しだ。

16年度の収入は、1兆1897億円の国庫補助を合わせて9兆6220億円。加入者が2.3%増えたほか、賃金がアップしたため、給与から定率で支払われる保険料の収入が前年度に比べ3681億円(4.6%)増えた。

支出は9兆1233億円で、内訳は保険給付費が5兆5751億円、高齢者医療への拠出金などが3兆3678億円だった。16年度診療報酬のマイナス改定で、給付費の伸びが鈍化したことも収支改善に働いた。

ただ、1人当たりの医療費の伸びが賃金の上昇幅を上回っており、協会けんぽは「黒字は一時的な要因が重なっただけで、赤字構造は変わっていない」としている。

17年3月末現在、加入者は3764万人。16年度の全国平均保険料率(労使折半)は10.0%だった』

以上のようになりますが、平成28年(2016年)10月から、次のような要件をすべて満たすと、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入する必要があります。

・月額賃金が8万8,000円以上(年収106万円以上)
・勤務期間が1年以上
・学生でないこと
・従業員数が501人以上の企業に勤務していること

冒頭に記載した記事を最初に読んだ時、この社会保険の適用拡大が、協会けんぽの決算に良い影響を与えたのだと思いました。

しかし改めて考えてみると、社会保険の適用が拡大されたのは、「従業員数が501人以上の企業」であり、中小企業の従業員とその家族が主に加入する協会けんぽには、あまり関係がないのです。

ですから冒頭の記事に記載されているように、「加入者が2.3%増」となったのは、失業率の改善で人手不足となり、それをカバーするため非正規雇用(パートやアルバイトなど)の方を、正社員にしたからではないでしょうか?

また人手不足をカバーするため、非正規雇用の方の労働時間を増やしたため、「1週間の勤務時間および1ヶ月の勤務日数が、正社員の4分の3以上あること」という、従来からある社会保険の適用基準を満たしたので、新たに社会保険に加入させたのかもしれません。

なお平成29年(2017年)4月から、「従業員数が501人以上の企業に勤務していること」という基準が、少しだけ変更になりました。

それは労使(「労働者と使用者」という意味)の合意がある場合には、従業員数が500人以下の企業であっても、社会保険に加入するというものです。

しかしあくまで労使の合意がある場合に限られるので、労使の合意がなければ、「1週間の勤務時間および1ヶ月の勤務日数が、正社員の4分の3以上あること」という、従来からある社会保険の適用基準を満たした時だけ、社会保険に加入します。

このような社会保険の加入者の増加より、協会けんぽの決算に良い影響を与えているのは賃金のアップであり、それにより保険料収入は前年度比で3681億円(4.6%)も増えているのです。

なぜ賃金のアップが、保険料収入の増加につながるのかというと、給与から控除されている健康保険の保険料は、賃金の増加に比例して、増えるようになっているからです。

それに加えて、給与から控除されている厚生年金保険の保険料も、賃金の増加に比例して、増えるようになっております。

ですから賃金のアップが続いていけば、健康保険や厚生年金保険の制度内容を改正しなくても、これらの財政は安定化していくのです。

また賃金がアップすれば、給与から控除される所得税が増え、これにより社会保障全般の財政が安定化していきます。

もちろん財政が安定化していくだけでなく、健康保険や厚生年金保険の加入者にも良い影響を与えます。

例えば原則65歳になると、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金の金額は、入社から定年退職するまでの間に、お勤め先の企業から受け取った、すべての月給とボーナスの平均額を元に算出するので、賃金がアップすれば年金額が増えるのです。

このように考えていくと社会保障の安定化のために、賃上げは不可欠であり、その賃上げを実現するには、更なる経済成長が必要になるのではないかと思います。
posted by FPきむ at 20:15 | 公的保険の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする