令和4年(2022年)12月14日の読売新聞を読んでいたら、出産一時金増額、「年収200万円」後期高齢者は保険料3900円引き上げにと題した、次のような記事が掲載されておりました。
『厚生労働省は、出産時の保険給付として支払われる「出産育児一時金」を現在の42万円から50万円に引き上げた場合、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の年間保険料は、年収200万円で3900円増、1100万円で13万円増となるなどの試算をまとめた。
厚労省は2024年度から同制度にも一時金を負担してもらうため、後期高齢者の約40%にあたる年収153万円超の人の保険料を引き上げる方針だ。
13日には与党の要請を受け、24年度から2年かけて段階的に引き上げる激変緩和措置を講じる方向で調整に入った。
具体的には、後期高齢者の約12%にあたる154万〜211万円の層で24年度の引き上げは見送り、25年度から引き上げる。
年間保険料の上限は当初、24年度に現在の66万円から一気に80万円まで引き上げる案を示していたが、24年度に73万円、25年度に80万円と2段階で引き上げる。
それぞれ年収984万円と1049万円で上限に達する。いずれも対象者は約1%となる』
以上のようになりますが、一般的に保険料を支払うのは、将来に自分が困った時に、保険給付を受給できる可能性があるからです。
例えば将来にガンになった時に、診断給付金などの保険給付を受給できる可能性があるからこそ、ガン保険の保険料を支払うのです。
またガン保険の保険料を支払い続けても、将来にガンになった時に、何も受給できないとしたら、誰もが馬鹿らしくなって、保険料の支払いを止めると思います。
後期高齢者医療制度に加入している75歳以上の方に、新たに子供ができる可能性は、限りなくゼロに近いのです。
もちろん例えば75歳以上の男性が、30〜40歳くらい年下の女性と結婚した場合には、新たに子供ができる可能性があります。
そうしたら女性が加入する健康保険などから、出産育児一時金が支給されますが、こういったケースは稀だと思います。
このように75歳以上の方が、出産育児一時金という保険給付を受給できるケースは、極めて少ないのです。
それにもかかわらず75歳以上の方が加入する、後期高齢者医療制度の保険料を引き上げして、出産育児一時金の税源にするというのは、おかしな話だと思います。
例えるなら将来にガンになった時に、診断給付金などの保険給付を受給できる可能性がないにもかかわらず、ガン保険の保険料を支払わせるようなものです。
もう一つおかしいと思うのは、後期高齢者医療制度を支えるために、健康保険や国民健康保険などの加入者が負担している、後期高齢者支援金に関する話です。
後期高齢者医療制度から支給される保険給付の税源は、公費(税金)が50%、現役世代が負担する後期高齢者支援金が40%、後期高齢者医療制度の加入者が負担する保険料が10%になります。
要するに後期高齢者医療制度から支給される保険給付の財源の40%くらいは、現役世代からの仕送りなのです。
そのため現役世代からの仕送りを受け取った75歳以上の方が、出産育児一時金の税源のために保険料を負担するのは、現役世代から送られてきた仕送りを、送り返すような行為に見えるのです。
近年は75歳以上の方が増えているため、現役世代が負担する後期高齢者支援金の金額は引き上げされています。
また後期高齢者支援金の負担に耐え切れない健康保険組合の解散が、相次いでいるのです。
令和3年(2021年)度には7〜8割くらいの健康保険組合が、赤字になる見通しと発表されていたので、これからも解散は続いていく可能性があります。
こういった状況だからこそ政府は、収入のある75歳以上の方に対して、出産育児一時金の財源の負担を求めたと推測されます。
この点は納得できるのですが、仕送りを返すくらいなら、従来よりも仕送り額を引き下げした方が良いと思うのです。
そもそも健康保険組合が負担に耐え切れないくらいに、無理して仕送りさせるというのは、おかしな話ではないでしょうか?
いずれにしろ出産育児一時金を増やすのは良い事ですが、もう一度財源の問題を、よく考えた方が良いと思います。