2022年12月02日

紙などの健康保険証を廃止するなら、年金手帳という前例を参考にしよう

令和元年(2019年)10月29日の産経ニュースを読んでいたら、年金手帳の廃止を検討 電子データ化で役割低下と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『厚生労働省が、公的年金の加入者に交付される「年金手帳」を廃止する方向で検討していることが29日、分かった。

手帳には記録管理のために一人一人に割り当てられる基礎年金番号が記載されているが、保険料の納付記録や加入資格の管理は電子データ化が進み、役割が低下した。

厚労省は手帳より発行費用がかからない簡素な通知書で代替する考えだ。30日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会に提案し、他の制度改正とともに関連法改正案を来年の通常国会に提出する。

年金手帳は1960年に導入された。20歳になって国民年金(基礎年金)の加入義務が発生した時などに合わせて発行され、日本年金機構が実務を担っている。

厚生年金が適用される会社に就職した時に提出したり、年金関係の手続きをしたりする際に必要となる』

以上のようになりますが、この記事の中に記載されているように、年金手帳はすでに廃止されたため、令和4年(2022年)4月からは発行されなくなりました。

これ以降に例えば20歳になって、国民年金に新規加入した方などには、基礎年金番号が記載された「基礎年金番号通知書」が、自宅などに送付されます。

年金手帳の廃止が社会保障審議会の部会に提案されたのは、令和元年(2019年)10月頃になります。

そして実際に廃止されたのが、令和4年(2022年)4月になるため、提案から廃止まで約2年半しか経過していないのです。

ここ最近の話題と言えば、年金手帳の廃止というより、紙などの健康保険証の廃止だと思います。

その発端になったのは、デジタル大臣に就任した河野太郎さんが、紙などの健康保険証を廃止し、マイナ保険証(健康保険証の登録を済ませたマイナンバーカード)に一本化すると発表した事です。

しかも河野太郎さんが廃止する時期の目標にしたのは、わずか2年後の令和6年(2024年)秋頃です。

ずいぶんと早急な印象を受けましたが、年金手帳が廃止されたスケジュールから考えると、それほど早急ではないとわかります。

また紙などの健康保険証が廃止される事に対しては、かなりの反対意見が出ておりますが、年金手帳の廃止に関しては、あまり反対意見が出なかったため、すごく対照的だと思いました。

年金手帳の廃止に関して、反対意見があまり出なかった理由について考えてみると、年金手帳の後半部分には、厚生年金保険の資格取得日(入社日など)や、資格喪失日(退職日など)を記入しておく欄などがあります。

この部分に自分で記入する方が少なかったので、年金手帳が廃止されても多くの方は困らないというのが、理由のひとつではないかと思います。

また年金手帳が廃止されたといっても、実際に年金手帳を受け取れなくなるのは、令和4年(2022年)4月以降に、国民年金に新規加入した方や、年金手帳を紛失した方などです。

そのため年金手帳をすでに保有している方は、きちんと保管しておけば、何ら影響を受けないというのも、反対意見があまり出なかった理由のひとつだと思います。

紙などの健康保険証を廃止する際も、年金手帳と同じように、すでに保有している方には影響が出ないようにすれば、反対意見が減るかもしれません。

例えば健康保険証を切り替える際に、マイナ保険証を保有している方には、こちらへの一本化を強制するのですが、マイナ保険証を保有していない方には引き続き、紙などの健康保険証を発行するのです。

年金手帳をまったく活用していない方でも、例えば転職して新しい勤務先で働き始めた際には、勤務先に対して提出する場合が多いため、これがないと困ってしまうと思います。

このように新しい勤務先が、年金手帳の提出を求めるのは、厚生年金保険の加入手続きをする際に、年金手帳の中に記載された基礎年金番号を、記入する必要があるからです。

ただ現在は基礎年金番号とマイナンバーが紐付けされているため、基礎年金番号の代わりに、マイナンバーを記入しても良いのです。

また基礎年金番号とマイナンバーが紐付けされているという事は、例えば年金事務所の職員の方は、相談に来た方のマイナンバーがわかれば、現在どんな公的年金に加入しているのかを、簡単に調べられます。

これと同じように例えば病院の職員は、診療を受けに来た方のマイナンバーがわかれば、現在どんな公的医療保険(健康保険、国民健康保険など)に加入しているのかを、簡単に調べられるはずです。

ただマイナンバーを見られる事に抵抗を感じる方がいるため、病院の職員がマイナンバーを、確認しない仕組みを採用しているのです。

具体的にはマイナンバーカードに内蔵された電子証明書を、受付にあるカードリーダーが読み取って、現在どんな公的医療保険に加入しているのかを、病院などが把握するのです。

こういった仕組みに加えて、病院の職員が例えば通知カードでマイナンバーを確認し、それを元にして現在どんな公的医療保険に加入しているのかを調べる仕組みを導入するのです。

そうすれば紙などの健康保険証が廃止されても困らないうえに、すでに行き渡っている通知カードを活用するため、コストもかからないと思います。
posted by FPきむ at 20:31 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする