2012年09月24日

告知義務違反と審査医の過失

生命保険や医療保険などの契約を締結する際には、危険測定の必要性から保険契約者もしくは被保険者に対して、重要事実に関する告知義務が課せられますが、もし告知義務違反があった場合には、保険会社は契約を解除して、保険金を支払わない事ができます。

しかし保険契約者もしくは被保険者に告知義務違反があっても、保険会社に悪意や過失があった場合には告知義務違反を理由として、保険契約を解除する事ができなくなります。

この悪意とは一般的な意味とは違い、ある事実について知っている事を示しますので、今回に関しては保険会社が、危険測定に必要な重要事実(例えば通院歴など)が存在する事を、知っていた場合を示しております。

つまり危険測定に必要な重要事実を知っていた場合(悪意)、もしくは不注意で知らなかった場合(過失)には、保険契約を解除する事ができなくなります。

ところで告知には「告知書によるもの」と、「医師による審査が必要なもの」に分かれますが、後者を行う審査医は告知受領権を与えられているため、「審査医の悪意や過失=保険会社の悪意や過失」と考える事ができます。

現在一般的に行われている検査としては視診、問診、聴診・打診(胸部および胸背部)、触診(腹部)、血圧・脈拍測定、測診(身長・体重など)、尿検査などです。

また一定額以上の高額な保険に加入する場合には、胸部レントゲン検査、血液検査、心電図検査などを行う場合があります。

そして審査医の過失の有無について判例は、「普通一般の開業医が用いる注意力を基準として、告知がなくとも通常発見しうるべき病症を、不注意により看過したか否かにより判断する」とされております。

ですから審査医は上記のような検査を行い、被保険者から告知のない重要事実を、通常の注意力で発見できなければ、それで足りるという事になりますので、それ以上に精密な検査を行う必要はないのです。

つまり最先端の医学的な知識や、特別な専門家の注意までは、要求されないという事です。

もし一部に異常(例えば血圧の異常)が見られたとしても、それ以上の重要な事実(例えば脳溢血での入院歴など)が被保険者から告知されず、他の検査項目に異常がなかった場合には、血圧の異常から考えられる、あらゆる病気の検査をしなくても、審査医に過失は認められないのが原則です。

また薬を服用している結果として血圧に異常が現れず、被保険者から薬の服用の事実を告知されなかった場合には、診査医が血圧の異常を見つける事ができなくても、審査医に過失は認められないのが原則です。

つまり余程の不注意がない限り、審査医の過失は認められないという事ですが、審査医の過失が認められなかった判例としては、以下のようなものがあります。

・肺結核に罹患している者に、打診・聴診で異常を認めず、血沈検査やレントゲン検査を行わなかった事例

・慢性肝炎患者がその事実を告げず肝臓ガンで死亡した場合に、血液検査のみを行い、生体検査まではしなかった事例

また逆に審査医の過失が認められた判例としては、非常に数は少ないのですが、以下のようなものがあります。

・慢性肝炎の患者に、点滴による注射痕があった事実を見逃した事例

・開腹手術の告知はなされていたのに、退院後の通院治療などの状況を質問確認しなかった事例

以上のようになりますが審査医の検査をクリアーできても、告知義務違反で契約を解除される場合がありますので、危険測定に必要な重要事実は、隠しておかない方が良いのです。
posted by FPきむ at 20:13 | 生命保険の知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする