2021年09月06日

金融庁が「生命保険料控除」の拡充を、税制改正要望案の中に記載へ

令和3年(2021年)8月26日の時事通信を読んでいたら、生命保険料控除の拡充を 金融庁の来年度税制改正要望と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『金融庁は26日、2022年度税制改正要望案を自民党に説明した。所得税額を計算する際、所得金額から差し引ける「生命保険料控除」の拡充が要望の柱。

控除額を最高12万円から15万円へ引き上げ、保険を活用した生活への備えを後押ししたい考えだ。

現行制度では、12年以降に契約した生命保険と介護医療保険、個人年金保険の控除限度額は各4万円。

年間計12万円以上の保険料を支払っても、所得控除は12万円で打ち切りとなる。要望では上限を各5万円に引き上げ、個人が契約しやすい環境づくりを目指す。

また、大型台風や洪水など、自然災害の多発で保険金支払いが増加傾向にあることを踏まえ、損害保険会社が災害時の支払いに備えた準備金を積み立てると税負担が減る特例の拡充を求める。

具体的には、損害保険会社が損金算入できる割合を示す積立率を現行の6%(経過措置含む)から10%(同)に引き上げることを求める』

以上のようになりますが、年末調整や確定申告の際に受けられる生命保険料控除は、平成24年(2012年)1月1日以降に契約した新契約の場合、次のような3種類に分かれております。

・生命保険料控除(死亡保険、学資保険など)
・介護医療保険料控除(医療保険、介護保険など)
・個人年金保険料控除(個人年金保険など)

それぞれの対象になる生命保険の保険料を、年間で8万円超支払った場合、所得から控除できる金額は一律で4万円になるため、受けられる生命保険料控除は合計で12万円(4万円×3)になります。

冒頭で紹介した記事によると金融庁は、この4万円を5万円に引き上げたいようなので、受けられる生命保険料控除は合計で15万円(5万円×3)まで上がります。

平成23年(2011年)12月31日までに契約した旧契約の場合、年末調整や確定申告の際に受けられる生命保険料控除は、生命保険料控除と個人年金保険料控除の2種類しかありません。

ただそれぞれの対象になる生命保険の保険料を、年間で10万円超支払った場合、所得から控除できる金額は一律で5万円になるため、受けられる生命保険料控除は合計で10万円(5万円×2)になります。

金融庁の税制改正要望案は上記のように、4万円という上限を5万円に引き上げするものなので、新契約でも旧契約と同じくらいの生命保険料控除を、受けられるようにしたいのかもしれません。

例えば課税所得が195万円〜329万9,000円の場合、所得税の税率は10%になります。

この税率が適用される会社員の方が、3つの生命保険料控除を上限額まで受けた場合、還付される所得税の目安は、次のような金額になります。

・現状の12万円の場合:1万2,000円
・税制改正要望案の15万円が実現した場合:1万5,000円

また例えば課税所得が330万円〜694万9,000円の場合、所得税の税率は20%になります。

この税率が適用される会社員の方が、3つの生命保険料控除を上限額まで受けた場合、還付される所得税の目安は、次のような金額になります。

・現状の12万円の場合:2万4,000円
・税制改正要望案の15万円が実現した場合:3万円

実際は所得税が還付されるだけでなく、翌年6月以降の住民税が安くなるため、もう少し節税効果を期待できるのです。

ただ税制改正要望案が実現したとしても、節税できる住民税の増額は、どちらのケースでも数千円にとどまります。

このように具体的な金額を計算してみると、新しい生命保険に加入しようという意欲は、あまり湧いてこないと思うのです。

また仮に意欲が湧いたとしても、給与がなかなか上がらない現状では、実行に移せないかもしれません。

それ以前に個人が、節税のために生命保険に加入するというのは、邪道のような気がするのです。

つまり生命保険に加入するのは、必要な保障を確保するためというのが、正道だと思うのです。

この正道を実施した時に、おまけとして生命保険料控除による節税がついてくると考えると、必要性の低い生命保険に加入しなくても済むのです。

また必要性の低い生命保険に加入しなければ、生命保険料控除による節税額以上のお金を、手元に残せると思います。
posted by FPきむ at 20:09 | 民間保険の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月02日

保険料の値上げに不満を感じるのは、「健康保険>厚生年金保険>雇用保険」

令和3年(2021年)7月28日の時事通信を読んでいたら、雇用保険料、引き上げ検討 雇調金急増、財源逼迫―厚労省と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『厚生労働省が雇用保険の保険料率を2022年度にも引き上げる検討に入ることが28日、分かった。

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、企業が従業員に支払う休業手当の一部を助成する雇用調整助成金(雇調金)の支給が急増し、財源が逼迫(ひっぱく)しているのが主因。

今後、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で具体的な料率などを議論する見通しだ。

雇用保険は、労働者が仕事を失った際に給付される失業者向けと、雇調金など雇用安定・能力開発の事業に大きく分けられる。

財源は、失業者向けが労使折半の保険料と国庫負担で、雇用安定・能力開発は企業の保険料などでそれぞれ賄われる』

以上のようになりますが、雇用保険の積立金は平成28年(2016年)3月末に、過去最大となる6兆円超に達しました。

この主な理由としては、日本の景気が回復し、失業率が低下したため、雇用保険から支給される基本手当、いわゆる失業手当を受給する方が減ったからです。

また積立金の増加を受けて、特例措置が実施されたため、雇用保険の保険料は法律で定められた水準より値下げされました。

しかし新型コロナウイルスの問題で、基本手当と雇用調整助成金の支給が急増し、積立金の枯渇が懸念されるようになったため、雇用保険の保険料の値上げが検討されているようです。

ただ現状は法律で定められた水準より低く、かつ過去の事例を見てみると、少しずつ値上げされているため、急激な負担増にはならないと思うのです。

また新型コロナウイルスの問題が終息し、再び日本の景気が回復すれば、雇用保険の保険料を値下げする余地が生まれます。

そのため雇用保険の保険料の値上げに対しては、それほど不満を感じないのですが、健康保険の保険料が値上げされたら、かなり不満を感じるのです。

会社員の方が加入する健康保険は、主に大企業の従業員が加入する「組合健保」と、主に中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ」の、2種類に分かれております。

ここ数年は組合健保を解散して、従業員を協会けんぽに移行させる企業が、かなり増えております。

この主な理由としては組合健保の保険料が、協会けんぽの保険料より高くなってしまうと、組合健保を続ける意味が薄れてしまうからです。

また組合健保の保険料を高くせざるを得ないのは、原則として75歳以上の方が加入する、後期高齢者医療に拠出する支援金の負担が、どんどん増えているからです。

つまり組合健保の保険料の値上げを招いているのは、組合健保の内部の問題ではなく、後期高齢者医療という外部の問題なのです。

協会けんぽには国庫補助(国からの援助)があるため、組合健保ほど深刻ではないのですが、やはり同じような問題に悩んでおります。

しかも高齢者の方が増え、いずれ財政が厳しくなる事は、十分に予想できたはずなのに、国は70歳以上の医療費の自己負担をゼロにするという大盤振る舞いを、実施してきたのです。

こういった事情があるため、健康保険の保険料の値上げには、かなり不満を感じるのです。

健康保険ほどではないにしろ、厚生年金保険も保険料が値上げされたら、不満を感じると思います。

年金制度の歴史を振り返ってみると、小泉政権時代の平成16年(2004年)に、大きな改革が実施されました。

またこの改革を実現するために、平成16年(2004年)から、平成29年(2017年)まで、毎年10月に厚生年金保険の保険料を、0.354%(本人:0.177%、事業主:0.177%)ずつ、値上げすると決定したのです。

これに不満を感じる国民は多かったのですが、厚生年金保険の保険料の値上げによって改革が実現すれば、100年安心な年金制度ができるという事で、仕方なく受け入れたのです。

現在は保険料の値上げが終了しているため、これ以上は増えないはずなのですが、再び保険料が値上げされたら、100年安心な年金制度ができるという話は、大嘘になってしまいます。

ですから健康保険ほどではないにしろ、厚生年金保険の保険料の値上げにも、不満を感じてしまうのです。
posted by FPきむ at 20:46 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする