2019年09月15日

高齢者を狙った保険の不正販売は、30年後くらいに絶滅すると思う理由

かんぽ生命から委託を受けた、郵便局の職員による保険の不正販売が、大きな問題になっております。

最近は保険だけなく、投資信託の不正販売も問題になっているため、収束する気配が見られません。

またいずれの問題についても、高齢者がターゲットになっているという、共通点があるようです。

このように高齢者がターゲットになるのは、お金を持っているからだと思うのですが、「老後資金2,000万円不足問題」で話題になった、高齢社会における資産形成・管理という報告書には、次のような記述があります。

『65歳時点における金融資産の平均保有状況は、夫婦世帯、単身男性、単身女性のそれぞれで、2,252 万円、1,552 万円、1,506万円となっている。

なお、住宅ローン等の負債を抱えている者もおり、そうした場合はネットの金融資産で見ることが重要である』

以上のようになりますが、金融庁が作成したこの報告書が話題になった時、2,000万円も老後資金を貯められないと思った方は、かなり多いと推測されます。

しかし夫婦世帯については平均的に、2,000万円以上の老後資金を保有しているのです。

もちろん平均値なので、皆が保有している訳ではないのですが、意外に持っている方は多いと思います。

ただ今の現役世代が65歳を迎えた時に、この平均値くらいの老後資金を保有するのは、かなり難しい気がするのです。

その理由は平成31年(2019年)3月6日の毎日新聞に、30、40代「貯金ゼロ」が23% SMBCの金銭感覚調査と題した記事が掲載されていたからですが、一部を紹介すると次のようになります。

『SMBCコンシューマーファイナンスは6日、30〜40代の金銭感覚に関する調査結果を発表した。

「現在の貯蓄額がゼロ」と答えた人が前年比6ポイント増の23.1%になり、平均貯蓄額も同52万円減の195万円に低下。

同社は「景気回復が働き盛りの賃金上昇につながっていない」と分析している』

以上のようになりますが、この調査によると貯蓄ゼロの方は、23.1%もいるとわかります。

他の機関が実施した調査でも、同じような結果が出ており、また貯蓄ゼロの方は増加傾向にあるようです。

ところで厚生労働省は令和元年(2019年)8月27日に、5年に一度実施している、公的年金の財政検証の結果を公表しました。

この財政検証の中で重要な点は、モデル世帯(平均的な賃金で40年間働いた会社員の夫と、その間ずっと専業主婦だった妻の、2名で構成された世帯)の給付水準が、年金の受給を始める65歳の時点で、現役世代の平均的な手取り賃金の50%を、長期的に維持できるかです。

なお現役世代の手取り収入に対する、新規裁定時の年金額の割合を「所得代替率」と言うため、公的年金の給付水準の目標は、「所得代替率50%維持」になります。

2019年度の所得代替率は61.7%のため、この基準をクリアーできております。

また厚生労働省は経済成長と労働参加に関するデータを変えて、6つのシナリオを示しておりますが、経済成長と労働参加が進む3つのケースでは、50%を維持できます。

ただ維持できるといっても、所得代替率は50%近くまで下がるため、現在より16%程度低くなるのです。

そのうえ経済成長と労働参加がもっとも進まないケースでは、国民年金の積立金が2052年度になくなり、所得代替率は36%〜38%程度まで下がるとしております。

すいぶん先の話だろうと思っていたら、2052年度は今から30年後くらいなので、けっこう近未来の話です。

またその頃には、上記の調査において貯蓄額がゼロ、またはほとんどないと回答していた30代〜40代の一部が、高齢者と区分される年齢になります。

ですから今から30年後は年金だけでなく、金融資産も少ない高齢者が、日本全国に溢れているのかもしれません。

そんな時代が来たら、郵便局の職員が高齢者に対して、保険や投資信託の不正販売をしようと思っても、ターゲットがほとんどいない可能性があります。

ですから高齢者を狙った保険や投資信託の不正販売は、特に規制をしなくても、今から30年後には絶滅すると思うのです。
posted by FPきむ at 20:11 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月02日

生命保険会社に不祥事があると、「貯蓄型保険」は「社畜型保険」に変わる

令和元年(2019年)8月30日の毎日新聞を読んでいたら、かんぽ生命 保険販売が9割減 投資信託販売も3割下回ると題した、次のような記事が掲載されておりました。

『かんぽ生命保険の7〜8月の保険販売が計画比で9割程度落ち込んでいることが明らかになった。

保険商品の不正販売問題の発覚と、その後の営業自粛が影響しており、郵便局で積極的な販売を控えている投資信託の販売も3割程度計画を下回るなど経営への影響が拡大している。

日本郵便の横山邦男社長が29日、自民党の郵政事業に関する特命委員会(細田博之委員長)の会合で議員の質問に答えた。議員からは「地元の郵便局では解約が相次いでいる。経営陣は問題の重大性を把握できていないのではないか」と非難する声が出たという。

日本郵政グループでは、中期経営計画(2018〜20年度)で示した数値目標に対する達成状況を「推進率」として管理している。かんぽ生命と日本郵便が顧客に不利益となる保険契約販売を認めた7月10日以降の推進率は、保険で1割、投信で7割程度にとどまっているという。

かんぽ生命と日本郵便は7月12日以降、保険の販売を自粛。投資信託はゆうちょ銀行の直営店と、1500超の郵便局で販売しているが、郵便局では顧客対応に専念するとして投信の積極的な営業を控えている』

以上のようになりますが、令和元年(2019年)6月頃から、かんぽ生命の委託を受けた郵便局による保険の不正販売について、マスコミが取り上げるようになりました。

こういったマスコミの報道によると不正販売の多くは、保険を乗り換える際に発生していたようです。

例えば顧客と新契約を結んでから、6ヶ月以内に旧契約を解約すると、旧契約の乗り換えとみなされ、職員の手当が少なくなるため、この6ヶ月間は保険料を二重払いさせておりました。

また旧契約を解約してから3ヶ月以内に新契約を結ぶと、旧契約の乗り換えとみなされ、職員の手当が少なくなるため、意図的に3ヶ月の無保険期間を作った後に、新契約を結んでおりました。

この3ヶ月の無保険期間に、保険事故(死亡、病気やケガなど)が発生した場合には、保険金を受け取れません。

また例えば病気になったなどの理由により、新契約を結べない場合には、ずっと無保険になる可能性があるのです。

こういった事態が発生するリスクを考えると、意図的に3ヶ月の無保険期間を作るのは、かなり怖い事だと思います。

冒頭で紹介した記事を読むと、「かんぽ生命保険の7〜8月の保険販売が計画比で9割程度落ち込んでいることが明らかになった」と記載されていたため、6月頃からのマスコミによる報道が、保険の販売に影響を与え始めたようです。

それは当然だと思うのですが、「地元の郵便局では解約が相次いでいる。経営陣は問題の重大性を把握できていないのではないか」という議員さんの発言には、疑問を感じてしまうのです。

その理由として貯蓄型保険は、途中で解約すると元本割れになる場合が多いため、元本割れを覚悟してすぐに解約すべきか、それとも不満があっても続けるべきかで迷っている方が、かなり存在していると思うからです。

こういった顧客の心理状態は、「社畜」(こんな仕事は辞めたいと思っているのに、会社の言いなりになって働くサラリーマン)と揶揄される方の心理状態と、かなり似ているような気がします。

どちらも本心では辞めたい(解約したい)と思っているのに、続けるか否かで迷っているのですから。

このように貯蓄型保険は、生命保険会社に不祥事が発生して、すぐに解約したいと思った時に、その決断に迷いを与えるため、まさに「社畜型保険」だと思います。

ですから人生を選択する自由を、生命保険会社に奪われたくないと思う方は、終身保険などの貯蓄型保険ではなく、定期保険などの掛け捨て型保険に加入した方が良いのです。

例えば定期保険だと、解約した時に戻ってくるお金がない、または少ない場合が多いのですが、終身保険よりも圧倒的に保険料が安いのです。

この差額を使わなければ、終身保険に加入した場合と同じように、お金が貯まっていきます。

またこの貯まったお金は、保険をいつ解約しても、金額が減ってしまう事はないので、生命保険会社に不祥事がした時に、保険を解約すべきかで迷う必要がなくなります。

なお使わなかったお金を、つみたてNISAやiDeCo(個人型の確定拠出年金)などで運用すれば、更にお金が貯まる可能性があります。

いずれにしろ最近は政府が、つみたてNISAやiDeCoなどの、税制優遇の大きい制度を用意しているのですから、保険でお金を貯める必要はないのです。
posted by FPきむ at 20:35 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする