2019年12月02日

標準利率が0%になると一時払い終身保険は、もう貯蓄型保険ではない

令和元年(2019年)11月14日の朝日新聞を読んでいたら、生保、低金利ショック 海外利下げ追い打ち、販売休止もと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『国内外で金利が下がり、生命保険会社が一部商品の販売をやめたり、商品のメリットが減ったりする影響が広がっている。

保険会社は顧客の保険料を運用で増やして保険金を払うが、運用が難しくなったためだ。米国が今年夏に利下げへ転じ、外貨建て保険の魅力も低下。老後の備えなどとして人気の貯蓄性保険が特に大きな打撃を受けている。

明治安田生命は10月で一時払い終身保険の販売を休止した。掛け捨ての定期保険と違い、高い貯蓄性と死亡時の保障をあわせ持つことが売りの商品。

保険料をまとめて払うため、ある程度の貯蓄を持つ高齢者らに人気だった。担当者は「今の低金利で円建ての貯蓄性保険を出しても、魅力的な商品にならない」と話す。

保険各社の商品に影響するのが、国債の利率をもとに国が定める「標準利率」。一時払い終身保険の場合、2016年夏まで0・75%だったが0・25%へ下がり、さらに来年1月に過去最低の0%になる。

各社はこの数字をもとに運用の前提である「予定利率」をはじく。ゼロだと、「長期の保障という観点からは商品開発が難しい」(第一生命)という』

以上のようになりますが、一時払い終身保険などの死亡保険の保険料は、次のような3つの予定率を元に決められているのです。

(A)予定死亡率
日本アクチュアリー会が作成する「標準生命表」を元に予測した、性別や年齢ごとの死亡率になります。

(B)予定事業率
生命保険会社の事業にかかる経費(営業職員の人件費、広告宣伝費など)を、あらかじめ予測したものになります。

(C)予定利率
生命保険会社は契約者から徴収した保険料の一部を、国債や株式などの市場で運用しておりますが、こういった運用によって生命保険会社が得られる、見込みの利率になります。

以上のようになりますが、(A)の予定死亡率と(B)の予定事業率は、引き上げになると保険料は高くなり、引き下げになると保険料は安くなります。

一方で(C)の予定利率は、引き上げになると保険料は安くなり、引き下げになると保険料は高くなります。

その理由として保険料の運用が上手くいく見通しなら、その運用益の分だけ、契約者から徴収する保険料を安くできるからです。

また(C)の予定利率を生命保険会社が決める時は、金融庁が設定する「標準利率」を参考にしているのです。

一時払い終身保険に関する標準利率は、10年もの国債と20年もの国債の、平均利回りを元にして算出されますが、ずっと下降を続けてきました。

いったいどこまで落ちるのかと思っていたら、冒頭で紹介した記事の中に記載されているように、令和2年(2020年)1月からは0%になるようです。

標準利率は予定利率を決める際の目安のため、予定利率と標準利率を同じにする必要はありません。

ただ法律で積み立てが義務付けられている、「責任準備金」(保険金や給付金などを支払うために準備しておくお金)の金額は、標準利率を基準にして算出します。

そのため予定利率を標準利率より高くして、契約者から徴収する保険料を安くした場合、責任準備金を積み立てるための資金が、保険料を安くした分だけ不足します。

その不足分は生命保険会社が支払う必要があり、負担が重くなるため、予定利率と標準利率は大きく離れないようになっているのです。

令和2年(2020年)1月から標準利率が0%になると共に、予定利率もこれと同じくらいになったら、貯蓄性はほぼ0になるため、もう貯蓄型保険と呼んではいけないと思います。

何と呼んだら良いのかはわかりませんが、「無駄使い防止型保険」と呼ぶのは、どうでしょうか?

なぜ「無駄使い防止型保険」なのかというと、保険は普通預金と違って簡単には引き出せず、また短期で解約すると、元本割れする場合があるからです。

ただ普通預金の金利は、将来的に上がる可能性がありますが、一時払い終身保険の予定利率は原則的に、契約時に決まったものがずっと適用されるため、いつまでも上がらないというデメリットがあるのです。

そうなると皮肉をこめて、「底辺金利保障型保険」と呼んでも良いと思います。

いずれにしろ貯蓄性はほぼ0になり、生命保険会社は次々と販売を止めているのですから、お金を貯めたいという方は、他の金融商品を検討した方が良いのです。
posted by FPきむ at 20:51 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月15日

日本人の半数は仕事と職場に不満があるので、郵政のノルマ廃止は難しい

令和元年(2019年)11月13日の西日本新聞を読んでいたら、「厳しいノルマ 理由の一つ」 日本郵政社長、認識翻す かんぽ不正問題 参院委質疑と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『日本郵政の長門正貢社長は12日の参院総務委員会で、かんぽ生命保険の不正販売問題の原因について「われわれの分析作業を進める中でも、厳しい(販売)目標が一つ、大きな理由であったのではないか」と述べた。山下芳生氏(共産党)の質問に答えた。

販売目標に関しては、弁護士でつくる特別調査委員会が9月末の中間報告書で「現場の営業の実力に見合わない目標金額」が不正につながったと指摘。

達成のため、「どう喝指導」と称される行為があったことも明らかにされたが、長門氏はこの時点では「ものすごい無理な数字を、法外な根拠レスの数字を置いたという自覚はない」との認識を示していた。

この日、社内の労働環境も難波奨二氏(立憲民主党)からただされた長門氏は、「他企業と比べても遜色ない」「労働組合との交渉により随時、改善を図ってきている」などと主張した。

また、一連の不正発覚後に、関与した郵便局員の退職が相次いでいるとされることについて、日本郵便の横山邦男社長は「(退職者数は)昨年までと比べて、そんなに差はない」と答弁した』

以上のようになりますが、ここ最近は郵便局の職員による、保険の不正販売に関するニュースを、あまり見かけない気がします。

そのため冒頭の記事を見た時は、久しぶりだなと思ったのですが、内容的には日本郵政の長門正貢社長が、保険の不正販売が起きた理由のひとつは、厳しいノルマだったという認識を示したというものです。

だったらノルマを永久に廃止するのが最善策になりますが、日本郵政だけでなく他の会社でも、それは難しいと考えております。

そのように考える根拠として、NHK放送文化研究所が加盟している国際比較調査グループISSPが、平成27年(2015年)に実施した調査「仕事と生活(職業意識)」を分析した、何が仕事のストレスをもたらすのかという資料があります。

この資料によると、仕事がおもしろい(そう思う+どちらかといえば、そう思う)と回答した日本人は、男性は43%、女性は50%という結果でした。

男女共に仕事がおもしろいと回答したのは、半数くらいになりますが、調査を実施した31ヶ国の中では、男性は下から2番目、女性は下から3番目になるため、国際的にはかなり低い水準です。

また同じ調査を分析した、仕事の満足度を左右するのは、仕事内容か、人間関係かという資料があります。

この資料によると、勤めている企業や組織に誇りを感じている(そう思う+どちらかといえば、そう思う)と回答した日本人は45%であり、男女で大きな差はなかったようです。

こういった調査結果を見ていると、日本人の半数くらいは仕事と職場に不満があるとわかります。

ですから何らかの目標がないと、仕事に対して意欲的に取り組めないため、ノルマの廃止は難しいと考えるのです。

なお前者の資料によると、経営者と従業員の関係が良いと思う(非常に良い+まあ良い)と回答した日本人は、男性は54%、女性は60%という結果でした。

これは調査を実施した31ヶ国の中で、男性は下から2番目、女性は下から4番目になるため、国際的にはかなり低い水準です。

このように経営者と従業員の関係が良くないのは、経営者は無謀なノルマを押し付けてくる存在と、従業員が考えているせいかもしれません。

また経営者と従業員の関係が良くないと、経営者は現場の従業員の状況がよく理解できないため、現場の営業の実力に見合わないノルマを、与えてしまうのかもしれません。

それにしても日本人の半数くらいは、仕事と職場に不満があるのが事実だとしたら、仕事の選び方を間違えている方が、かなり多いような気がするのです。

将来的には年金の支給開始年齢が、引き上げされる可能性があり、実際に引き上げされたら、不満な仕事と職場にかかわる期間が、現在より長くなってしまうのです。

これは非常に辛い事ですから、学生時代のキャリア教育を充実させて、ミスマッチが起きないようにする必要があると思います。

また金融機関のノルマは、何らかの形で残っていくと思うので、必要性の低い金融商品を買わされないようにするために、学生時代の金融教育を充実させる必要があると思います。

ただ今回の保険の不正販売に関しては、高齢者の被害が多かったようなので、まずはこういった方を保護する仕組みを、国が整備する必要があるはずです。
posted by FPきむ at 20:39 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする