令和5年(2023年)1月25日の東京新聞を読んでいたら、中条きよし参院議員に「年金未納」が発覚した意味 政治家にとって「鬼門」とされる理由とはと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。
『昨夏の参院選の比例代表で初当選した中条きよし参院議員(76)が、年金保険料を納めていない時期があったことが明らかになった。
所属する日本維新の会の幹部は今後の対応について、曖昧な言葉を繰り返す。過去を振り返れば、年金問題は政治家にとって「鬼門」。維新はこの先、どうするのか。
「僕はうそをつかない。逃げも隠れもしない」
俳優や歌手として活動し、時代劇「新・必殺仕事人」やヒット曲「うそ」で知られる中条氏は23日、国会内で記者団の取材にそう語った。
同氏の議員事務所に尋ねると「事実関係を確認中。対応は幹事長に一任している」とだけ話す。
では、維新の藤田文武幹事長はどうか。同日の会見では「全ての期間で納付しているかというと、そうではないと本人が認めている」と明らかにした。
未納問題は、先週発売の週刊文春の報道で発覚。中条氏は数十年間の未納期間があり、日本年金機構の職員が督促したが「年金なんていらない。払わない」と断られた、という内容だ。
藤田氏は事実関係の一部に誤りがあると指摘し、未納期間の調査には数カ月かかるとも説明。その上で「事実関係を把握し、対応を決めたい」と述べた』
以上のようになりますが、この記事を読み終わった時に、もっとも気になったのは、「年金なんていらない。払わない」という部分です。
こういった主張が認められるのだったら、次のような恐ろしい主張も、認められてしまうと思うのです。
「俺様は運転が上手いから絶対に事故は起こさない、だからシートベルトを付けなくても良いのだ」
「俺様はお酒に強いから絶対に悪酔いはしない、だから飲酒運転したって問題はないのだ」
冗談はさておき、国民年金の保険料を未納にしていた中条きよし参院議員であっても、おそらく国民健康保険の保険料は、きちんと納付していたと思います。
そのように考える理由としては、若くても病気やケガになるため、次のような発想は思い浮かびにくいからです。
「俺様は絶対に病気やケガにならない、だから国民健康保険の保険料は納付しないのだ」
また中条きよし参院議員のような富裕層であっても、入院した時にかかる数百万円〜数千万円の医療費を、全額自己負担するというのは、かなり厳しいからです。
もし国民年金の保険料は未納だったけれども、国民健康保険の保険料はきちんと納付していたのなら、国民年金の保険料を納付するまで、保険証を没収すれば良かったと思います。
国民年金と国民健康保険は別々の制度であり、それぞれを運営している組織も、次のような違いがあるのです。
国民年金:日本年金機構
国民健康保険:市区町村と都道府県
そのため国民年金の保険料を未納にしている方の保険証を、市区町村などが没収するのは不可能だったのです。
しかし平成19年(2007年)4月に、「国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律」が施行されてからは、没収しても良い事になりました。
実際に没収した後は、短期間で有効期限が切れてしまう保険証を、没収した保険証の代わりに交付すると共に、国民年金の保険料の納付を促していくのです。
国民年金に加入して保険料を納付するのは、20歳から60歳までの40年間になります。
また昭和21年(1946年)生まれの中条きよし参院議員が、60歳の誕生日を迎えたのは、平成18年(2006年)になります。
そうなると上記のような法律が施行される直前に、中条きよし参院議員は60歳の誕生日を迎えていたのです。
ただ国民年金の保険料の徴収権に関する時効は原則として、保険料の納付期限(各月の翌月末日)から2年になります。
これに加えて日本年金機構から督促状が送付されると、進行した時効が振り出しに戻るのです。
そのため国民年金の保険料(特に50代後半の分)を納付させるために、市区町村は保険証を没収できた可能性があります。
また保険証を没収されたら、「年金なんていらない。払わない」などという強気な姿勢を、維持できなかったかもしれません。
2023年02月01日
2023年01月03日
出産育児一時金の財源を高齢者が負担するのは、仕送りを返すような行為
令和4年(2022年)12月14日の読売新聞を読んでいたら、出産一時金増額、「年収200万円」後期高齢者は保険料3900円引き上げにと題した、次のような記事が掲載されておりました。
『厚生労働省は、出産時の保険給付として支払われる「出産育児一時金」を現在の42万円から50万円に引き上げた場合、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の年間保険料は、年収200万円で3900円増、1100万円で13万円増となるなどの試算をまとめた。
厚労省は2024年度から同制度にも一時金を負担してもらうため、後期高齢者の約40%にあたる年収153万円超の人の保険料を引き上げる方針だ。
13日には与党の要請を受け、24年度から2年かけて段階的に引き上げる激変緩和措置を講じる方向で調整に入った。
具体的には、後期高齢者の約12%にあたる154万〜211万円の層で24年度の引き上げは見送り、25年度から引き上げる。
年間保険料の上限は当初、24年度に現在の66万円から一気に80万円まで引き上げる案を示していたが、24年度に73万円、25年度に80万円と2段階で引き上げる。
それぞれ年収984万円と1049万円で上限に達する。いずれも対象者は約1%となる』
以上のようになりますが、一般的に保険料を支払うのは、将来に自分が困った時に、保険給付を受給できる可能性があるからです。
例えば将来にガンになった時に、診断給付金などの保険給付を受給できる可能性があるからこそ、ガン保険の保険料を支払うのです。
またガン保険の保険料を支払い続けても、将来にガンになった時に、何も受給できないとしたら、誰もが馬鹿らしくなって、保険料の支払いを止めると思います。
後期高齢者医療制度に加入している75歳以上の方に、新たに子供ができる可能性は、限りなくゼロに近いのです。
もちろん例えば75歳以上の男性が、30〜40歳くらい年下の女性と結婚した場合には、新たに子供ができる可能性があります。
そうしたら女性が加入する健康保険などから、出産育児一時金が支給されますが、こういったケースは稀だと思います。
このように75歳以上の方が、出産育児一時金という保険給付を受給できるケースは、極めて少ないのです。
それにもかかわらず75歳以上の方が加入する、後期高齢者医療制度の保険料を引き上げして、出産育児一時金の税源にするというのは、おかしな話だと思います。
例えるなら将来にガンになった時に、診断給付金などの保険給付を受給できる可能性がないにもかかわらず、ガン保険の保険料を支払わせるようなものです。
もう一つおかしいと思うのは、後期高齢者医療制度を支えるために、健康保険や国民健康保険などの加入者が負担している、後期高齢者支援金に関する話です。
後期高齢者医療制度から支給される保険給付の税源は、公費(税金)が50%、現役世代が負担する後期高齢者支援金が40%、後期高齢者医療制度の加入者が負担する保険料が10%になります。
要するに後期高齢者医療制度から支給される保険給付の財源の40%くらいは、現役世代からの仕送りなのです。
そのため現役世代からの仕送りを受け取った75歳以上の方が、出産育児一時金の税源のために保険料を負担するのは、現役世代から送られてきた仕送りを、送り返すような行為に見えるのです。
近年は75歳以上の方が増えているため、現役世代が負担する後期高齢者支援金の金額は引き上げされています。
また後期高齢者支援金の負担に耐え切れない健康保険組合の解散が、相次いでいるのです。
令和3年(2021年)度には7〜8割くらいの健康保険組合が、赤字になる見通しと発表されていたので、これからも解散は続いていく可能性があります。
こういった状況だからこそ政府は、収入のある75歳以上の方に対して、出産育児一時金の財源の負担を求めたと推測されます。
この点は納得できるのですが、仕送りを返すくらいなら、従来よりも仕送り額を引き下げした方が良いと思うのです。
そもそも健康保険組合が負担に耐え切れないくらいに、無理して仕送りさせるというのは、おかしな話ではないでしょうか?
いずれにしろ出産育児一時金を増やすのは良い事ですが、もう一度財源の問題を、よく考えた方が良いと思います。
『厚生労働省は、出産時の保険給付として支払われる「出産育児一時金」を現在の42万円から50万円に引き上げた場合、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の年間保険料は、年収200万円で3900円増、1100万円で13万円増となるなどの試算をまとめた。
厚労省は2024年度から同制度にも一時金を負担してもらうため、後期高齢者の約40%にあたる年収153万円超の人の保険料を引き上げる方針だ。
13日には与党の要請を受け、24年度から2年かけて段階的に引き上げる激変緩和措置を講じる方向で調整に入った。
具体的には、後期高齢者の約12%にあたる154万〜211万円の層で24年度の引き上げは見送り、25年度から引き上げる。
年間保険料の上限は当初、24年度に現在の66万円から一気に80万円まで引き上げる案を示していたが、24年度に73万円、25年度に80万円と2段階で引き上げる。
それぞれ年収984万円と1049万円で上限に達する。いずれも対象者は約1%となる』
以上のようになりますが、一般的に保険料を支払うのは、将来に自分が困った時に、保険給付を受給できる可能性があるからです。
例えば将来にガンになった時に、診断給付金などの保険給付を受給できる可能性があるからこそ、ガン保険の保険料を支払うのです。
またガン保険の保険料を支払い続けても、将来にガンになった時に、何も受給できないとしたら、誰もが馬鹿らしくなって、保険料の支払いを止めると思います。
後期高齢者医療制度に加入している75歳以上の方に、新たに子供ができる可能性は、限りなくゼロに近いのです。
もちろん例えば75歳以上の男性が、30〜40歳くらい年下の女性と結婚した場合には、新たに子供ができる可能性があります。
そうしたら女性が加入する健康保険などから、出産育児一時金が支給されますが、こういったケースは稀だと思います。
このように75歳以上の方が、出産育児一時金という保険給付を受給できるケースは、極めて少ないのです。
それにもかかわらず75歳以上の方が加入する、後期高齢者医療制度の保険料を引き上げして、出産育児一時金の税源にするというのは、おかしな話だと思います。
例えるなら将来にガンになった時に、診断給付金などの保険給付を受給できる可能性がないにもかかわらず、ガン保険の保険料を支払わせるようなものです。
もう一つおかしいと思うのは、後期高齢者医療制度を支えるために、健康保険や国民健康保険などの加入者が負担している、後期高齢者支援金に関する話です。
後期高齢者医療制度から支給される保険給付の税源は、公費(税金)が50%、現役世代が負担する後期高齢者支援金が40%、後期高齢者医療制度の加入者が負担する保険料が10%になります。
要するに後期高齢者医療制度から支給される保険給付の財源の40%くらいは、現役世代からの仕送りなのです。
そのため現役世代からの仕送りを受け取った75歳以上の方が、出産育児一時金の税源のために保険料を負担するのは、現役世代から送られてきた仕送りを、送り返すような行為に見えるのです。
近年は75歳以上の方が増えているため、現役世代が負担する後期高齢者支援金の金額は引き上げされています。
また後期高齢者支援金の負担に耐え切れない健康保険組合の解散が、相次いでいるのです。
令和3年(2021年)度には7〜8割くらいの健康保険組合が、赤字になる見通しと発表されていたので、これからも解散は続いていく可能性があります。
こういった状況だからこそ政府は、収入のある75歳以上の方に対して、出産育児一時金の財源の負担を求めたと推測されます。
この点は納得できるのですが、仕送りを返すくらいなら、従来よりも仕送り額を引き下げした方が良いと思うのです。
そもそも健康保険組合が負担に耐え切れないくらいに、無理して仕送りさせるというのは、おかしな話ではないでしょうか?
いずれにしろ出産育児一時金を増やすのは良い事ですが、もう一度財源の問題を、よく考えた方が良いと思います。