2013年05月25日

法人契約の生命保険を契約転換した場合の仕訳方法

契約転換(8月27日のブログを参照)とは、すでに契約している生命保険の責任準備金(以下では「転換価格」で記述)を、新しく契約する生命保険の保険料の一部に充当する事により、保険金の金額を変えずに保険料を減らしたり、保険料を変えずに保険金の金額を増やしたりできる制度になります。

この契約転換には転換価格を、養老保険(4月24日のブログを参照)や終身保険(8月7日のブログを参照)の保険料のみに充当する「基本転換方式」と、養老保険や終身保険の保険料だけでなく、定期保険(8月9日のブログを参照)の保険料にも充当する、「相似(比例)転換方式」があります。

法人が保険契約者となる生命保険を、上記のいずれかの方式で契約転換した場合、その仕訳方法は次のようになります。

(1)基本転換方式
養老保険に加入していた法人が基本転換方式で、定期付終身保険(終身保険に定期保険の特約が付いた生命保険)に転換したとします。

下記のような契約形態で法人が支払った養老保険の保険料は、

・保険契約者:法人
・被保険者:役員や従業員
・死亡保険金の受取人:法人
・満期保険金の受取人:法人

その全額を次のように「保険料積立金」として、資産に計上していたはずですが、詳細については11月13日のブログを参照して下さい。

【借方】                 【貸方】
保険料積立金(資産の増加)   現金(資産の減少)
500,000円             500,000円

契約転換の際にはまず、この「保険料積立金」を取り崩しますが、下記のように配当金を受け取っており、その時に資産に計上した「配当金積立金」を取り崩していないのなら、それも契約転換の際に取り崩します。

【借方】                 【貸方】
配当金積立金(資産の増加)  雑収入(収益の発生)
10,000円              10,000円

そして定期付終身保険の、終身保険部分の保険料に充当された金額、つまり転換価格(この例では1,000,000円)を資産に計上して、その差額を雑収入として益金に算入、または雑損失として損金に算入しますが、これらを併せた仕訳(勘定科目)は次のようになります。

注:借方が「保険料積立金」になるのは、終身保険の保険料を支払った時は資産に計上するからですが、詳細については11月19日のブログを参照して下さい(貸方の「保険料積立金」は以前に加入していた養老保険の、保険料の取り崩しになります)。

【借方】                 【貸方】
保険料積立金(資産の増加)  保険料積立金(資産の減少)
1,000,000円            500,000円
                    配当金積立金(資産の減少)
                     10,000円
                    雑収入(収益の発生)
                     490,000円   

(2)相似(比例)転換方式
養老保険に加入していた法人が相似(比例)転換方式で、定期付終身保険に転換したとしますが、(1)との違いは転換価格が終身保険部分の保険料だけでなく、定期保険部分の保険料にも充当される点になります。

もし転換価格である1,000,000円のうち、終身保険部分に700,000円、定期保険部分に300,000円が充当された場合、その仕訳方法は次のようになりますが、その他の条件は(1)と同じものとします。

【借方】                 【貸方】
保険料積立金(資産の増加)  保険料積立金(資産の減少)
700,000円             500,000円
前払費用(資産の増加)     配当金積立金(資産の減少)
300,000円             10,000円
                    雑収入(収益の発生)
                     490,000円   

なお「前払費用」は期間の経過に応じて取り崩し、定期保険の保険料に振り替えますが、その定期保険の保険期間(7月18日のブログを参照)が10年で、保険料が年払い(毎年1回だけ保険料を支払うタイプ)なら、「300,000円÷10年=30,000円」で、次のように毎年30,000円を定期保険の保険料に振り替えます。

【借方】                  【貸方】
定期保険料(費用の発生)      前払費用(資産の減少)
30,000円                30,000円

なお法人契約の定期保険の仕訳方法については、12月8日のブログを参照して下さい。

ところで契約者貸付(4月14日のブログを参照)を利用して、保険会社からお金を借りていた場合には、契約転換する際に返済しなければなりませんが、例えば契約者貸付を利用して100,000円を借りていたら、次のように仕訳されていたはずです(この仕訳の詳細については、12月22日のブログを参照して下さい)。

【借方】                 【貸方】
現金(資産の増加)         借入金(負債の増加)
99,800円              100,000円
租税公課(費用の発生)
200円

契約者貸付の借入金を返済する場合には、負債に計上していた借入金を取り崩して、返済日までの利息(2,500円)は元本に繰入れず損金に算入しますが、これらを併せた仕訳は次のようになります。

【借方】                 【貸方】
保険料積立金(資産の増加)  保険料積立金(資産の減少)
597,500円             500,000円
前払費用(資産の増加)     配当金積立金(資産の減少)
300,000円             10,000円
借入金(負債の減少)       雑収入(収益の発生)
100,000円             490,000円       
支払利息(費用の発生)
2,500円

借入金が返済された分だけ、転換価格が597,500円(700,000円−100,000円−2,500円)になっておりますが、その他の条件は上記と同じものとします。 

以上のようになりますが、実際の仕訳はこれらだけでなく、新しく契約する生命保険(今回なら定期付終身保険)の仕訳が加わります。

追記:
「生命保険 保障の見直し 仕訳」というキーワードで検索して、このブログに辿り着いた方を見かけました。

しかし保障の見直しは契約転換だけでなく、払済保険や延長保険への変更、保険金の中途減額など、何種類かありますので、ただ「保障の見直し」と検索しただけでは、正解に辿り着けないと思うのです。

なおインターネットで検索するとわかるように、この中で契約転換はもっとも評判の悪い見直し方法、つまり保険会社が得をして、保険契約者が損をする場合が多い見直し方法なので、十分にデメリットを理解してから、利用する事をおすすめします。

また転換の経理処理は難易度が高いうえに、仕訳の仕方を保険会社に質問しても、税理士法に違反するなどと言って、回答しない場合があるので、仕訳の仕方をきちんと説明してくれる保険会社以外では、転換を利用しない事をおすすめします。
posted by FPきむ at 20:31 | 法人保険の選び方と仕訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする