2018年07月17日

組合健保から協会けんぽに早く移行すると、「先行者利益」を得られる

平成30年(2018年)7月6日の日本経済新聞を読んでいたら、協会けんぽの17年度、4486億円の黒字 高齢者支援重くと題した、次のような記事が掲載されておりました。

『中小企業の従業員や家族が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)が6日発表した2017年度決算は4486億円の黒字だった。黒字は8年連続。黒字額は前の年度の4987億円に次ぐ規模だった。

ただ高齢者医療を支えるための支援金負担は増加傾向にあり、加入者の高齢化の影響で保険給付も膨らんでいる。財政は今後厳しさを増すとみられる。

3月末時点の加入者数は約3860万人で、前の年度と比べて2.5%増えた。17年度の収入は前の年度と比べて3.4%増の9兆9485億円だった。

加入者数や賃金が伸びたことから保険料収入が約3800億円増えた。国からの補助金は1兆1343億円と、前の年度から5%弱減った。

支出は4.1%増の9兆4998億円だった。支出のうち、高齢者医療への拠出金は3兆4913億円と4割弱に上る。拠出金額は約1200億円増えており、今後も増加が続くとみられる。

準備金は2兆2573億円と、支出の約3カ月分まで積み上がっている。法律で求める1カ月分を大きく上回っている』

以上のようになりますが、会社員の方が加入する健康保険は、次の2種類に分かれております。

■主に大企業の従業員とその家族が加入する「組合健保」
単一の企業または複数の企業が設立した、健康保険組合が運営している

■主に中小企業の従業員とその家族が加入する「協会けんぽ」
非公務員型の公法人である、全国健康保険協会が運営している

今回の記事の内容は、後者の協会けんぽの平成29年(2017年)度の決算が、4486億円の黒字だったというものですが、個人的な感想を書いてみると次のようになります。

(1)賃上げは協会けんぽだけでなく、個人にとってもプラスになる
給与から控除される社会保険(健康保険、厚生年金保険)の保険料は、原則として給与の金額に比例して増えていきます。

ですから景気が回復して賃上げが実施されれば、この記事の中に記載されているように、協会けんぽの収入は増えていき、財政は安定化するのです。

その一方で社会保険の保険料が増えるのは、個人にとっては悪い話のように感じます。

しかし給与から控除される厚生年金保険の保険料が増えるほど、将来に受給できる年金額が増えます。

また給与から控除される健康保険の保険料が増えるほど、病気やケガで仕事を休んだ時に支給される、「傷病手当金」の金額が増えますので、個人にとっても悪い話ばかりではないのです。

(2)財政を安定化させるため、社会保険の適用拡大を続けるしかない
平成28年(2016年)10月から、社会保険の適用が拡大されたため、次のような要件をすべて満たすと、パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、社会保険に加入しなければなりません。

・1週間あたりの勤務時間が20時間以上
・月額賃金が8万8000円以上(年収106万円以上)
・勤務期間が1年以上
・学生ではない
・従業員数が501人以上の企業に勤務している

これにより協会けんぽの収入は増えたようですが、平成29年(2017年)度の黒字は、前年度より金額が低下しているところを見ると、社会保険の適用を拡大した効果は、薄れているようです。

そうなると財政を安定化させるため、社会保険の適用を更に拡大して、収入の増加を図るのではないかと思います。

これは個人にとって悪い話のように感じますが、社会保険の保険料は事業主が半分を負担してくれるため、月給が17万5,000円未満であれば、「国民年金の保険料>厚生年金保険の保険料」になるのです。

また厚生年金保険に加入すれば、原則65歳になった時に、老齢基礎年金に上乗せして、老齢厚生年金も受給できるようになるため、個人にとっても悪い話ばかりではないのです。

(3)協会けんぽに早く移行すると、「先行者利益」を得られる
この記事を見ると協会けんぽの支出の4割弱は、高齢者医療制度の財源になっている、「前期高齢者納付金」や「後期高齢者支援金」だとわかります。

高齢者医療制度の財源のため、これだけ支出しているにもかかわらず、協会けんぽが8年連続で黒字を維持できているのは、国からの補助金の影響が大きいと思うのです。

その理由として国からの補助金が、協会けんぽより圧倒的に少ない組合健保は、7割程度が赤字になっているからです。

高齢者医療制度などによって発生した赤字に、耐えられなくなった組合健保は、これを解散して協会けんぽに移行しております。

ただ西濃運輸の組合健保が解散して、協会けんぽに移行した際には、新たに協会けんぽに対して、16億円もの補助金が投入されたと推計されているため、組合健保から協会けんぽに移行する企業が増えていくと、今度は国が耐えられなくなると思うのです。

そうなると国は補助金を削減すると考えられるため、協会けんぽに移行した後の旨味がなくなってしまいます。

またこのような理由により、いずれ補助金が削減されるとしたら、組合健保から協会けんぽに、他社よりも早く移行して、「先行者利益(いち早く参入する事で得られるメリット)」を、できるだけ得た方が良いと思うのです。
posted by FPきむ at 20:24 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月03日

労働政策審議会で副業や兼業をする時の、労災保険に関する議論が開始へ

平成30年(2018年)6月22日の毎日新聞を読んでいたら、労政審部会:副業や兼業の労災、議論始めると題した、次のような記事が掲載されておりました。

『厚生労働省は22日、厚労相の諮問機関・労働政策審議会の労働条件分科会労災保険部会を開き、副業や兼業で複数の企業で働く労働者の労災保険給付金額や労災認定のあり方について議論を始めた。

論点は二つある。一つは、労災事故による労災保険給付額が事故に遭った勤務先の収入に応じた分しか対象とせず、収入が激減する可能性があることだ。

もう一つは、労働時間などの業務上の負荷が各企業ごとにしか評価されないため、実際に働いた時間が労災の認定時に合算されない点だ。

労働者代表の委員からは「労働者保護の観点から積極的に検討してほしい」などの意見が出た。法改正を含め、検討を進める』

以上のようになりますが、副業や兼業をする場合の社会保険の適用は、原則として次のようになっております。

■労災保険
労災保険は雇用形態にかかわらず、すべての労働者に対して適用されるため、パートやアルバイトなどの短時間労働者にも適用されます。

ですから副業や兼業の最中に、例えば業務に起因するケガをした場合には、副業や兼業をしている企業が加入する労災保険を利用して、治療をしていく事になります。

■雇用保険
生計を維持するのに必要な主たる賃金を受けている、本業の企業の方で雇用保険に加入し、副業や兼業の企業では雇用保険に加入しません。

しかし副業や兼業の方が、本業より賃金が多くなった場合には、生計を維持するのに必要な主たる賃金を受けているのが、副業や兼業をしている企業になるため、こちらの方で雇用保険に加入する必要があります。

■健康保険、厚生年金保険
副業や兼業の労働日数や賃金などが多くなって、社会保険に加入する要件を満たした場合には、副業や兼業をしている企業の、健康保険や厚生年金保険に加入します。

つまり本業の方でも、健康保険や厚生年金保険に加入している場合には、二重加入になるのです。

そうなると2枚の保険証を保有する可能性がありますが、実際に使用するのは、「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」の提出により、メインに選択した方だけになるので、メインでない方は返却しなければなりません。

以上のようになりますが、上記のようにパートやアルバイトであっても、副業や兼業をしている企業が加入する労災保険を利用できるため、特に問題はないような気がします。

しかし現状のままだと、次のような点で問題があるため、労働政策審議会が議論を開始したのです。

(1)低い賃金だけを元にして、休業補償給付などが算出される
業務上の病気やケガで仕事を休み、賃金を受けられない場合には、休業する前の賃金の6割程度になる、休業補償給付を受給できます。

またその上乗せとして、休業する前の賃金の2割程度になる、休業特別支給金も受給できるため、両者を合わせると8割程度になります。

ただ現状では本業と、副業や兼業の賃金を合算しないため、副業や兼業をしている最中にケガをした場合には、副業や兼業の低い賃金を元にして、休業補償給付と特別支給金が算出されてしまうのです。

ケガの状態がひどく、副業や兼業ができない状態になれば、本業もできない状態になる場合が多いため、副業や兼業の低い賃金を元にした休業補償給付と特別支給金だけでは、生活するのが難しくなると思います。

(2)本業の労働時間だけを元にして、過労死か否かが判断される
例えば過労死した場合には、亡くなった方の一定の遺族に対して、労災保険から遺族補償年金(一時金)や、葬祭料(葬祭給付)などが支給されます。

また過労死なのか否かは、亡くなる1ヶ月〜6ヶ月前の、労働時間などを元にして判断されます。

例えば亡くなる前の、1ヶ月あたりの残業時間が45時間を超えると、業務と死亡の関連性が除々に強くなると判断されるのです。

ただ現状では本業と、副業や兼業の労働時間を合算しないため、本業の労働時間だけを元にして、過労死なのか否かが判断されます。

そうなると両者を合わせた労働時間が長くなり、疲労がかなり蓄積していても、過労死と判断されない場合があるのです。

以上のようになりますが、副業や兼業で複数の企業で働く方は増えているため、どのような結論になるのかを、注目したいところです。
posted by FPきむ at 20:04 | 公的保険の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする