2017年10月19日

複雑であるがゆえの支給漏れは、年金だけでなく生命保険でも発生する

衆議院議員や横浜市長であった中田宏さんの、平成29年(2017年)9月21日のブログを読んでいたら、年金支給漏れ。やはり「シンプル」が一番!と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『今回の問題は簡潔にすれば「加給年金を受けていた人が代わりに受けられた振替加算の支給漏れ」だそうですが、本来それぞれ仕組みは複雑で、それであるがゆえに発生した問題とも思えます。

年金制度はそもそも平成22(2010)年に社会保険庁が日本年金機構に改組され、平成27(2015)年に共済年金(公務員系)と厚生年金(民間企業系)が一元化されるなど紆余曲折がありました。

今回の10万6千人の支給漏れの内訳は以下のようにさまざまですが、年金機構の職員が事務処理を間違えてしまったくらいです。

年金機構と共済組合間の連携不足 5万人以上
システム処理エラー 3万5000人
年金機構の事務処理ミス 5300人
受給者の届け出漏れ 1万2000件

昨年は臨時国会で「年金カット法」と揶揄された改正年金法成立を当ブログで扱いましたが、複雑な仕組みは国民に対して
・説明しにくい
・わかりにくい
・確かめにくい
ので、
・事故が起きやすい
・監視しにくい
・不正が起こりやすい
状態となる要因にもなり得ます。

複雑ゆえの弊害は年金だけなく一般にも当てはまるでしょう。例えば、企業の経理も複雑で専門家しかわからないような仕組みであれば前述の懸念が生まれます。

社会の仕組みはすべからくシンプルが望ましいと考えます』

以上のようになりますが、原則として65歳から支給される老齢厚生年金の受給権者に、一定の配偶者がいる時は、加給年金が上乗せして支給されます。

また加給年金の対象になっている配偶者が65歳になると、加給年金は「振替加算」に切り替わり、配偶者が受給する老齢基礎年金に、上乗せして支給されます。

現在話題になっている年金の支給漏れは、加給年金が振替加算に切り替わらなかった事により、発生してしまったのです。

これについて日本年金機構は、「年金機構と共済組合間の連携不足」、「システム処理エラー」、「年金機構の事務処理ミス」、「受給者の届け出漏れ」など、4つの理由を挙げております。

しかし中田さんによると根本的な理由は、年金制度の仕組みが複雑すぎる事にあるとしております。

また「複雑ゆえの弊害は年金だけなく一般にも当てはまる」と指摘しており、具体例として「企業の経理」が挙げられておりますが、個人的には生命保険を例に挙げるのが、もっとも適していると思うのです。

その理由として複雑すぎる事を理由にする支給漏れは、生命保険においても定期的に発生しているからです。

例えば保険金を受給できる状態になっているのに、複雑すぎてそれがわからず、保険金を請求するのを忘れてしまい、支給漏れになっている場合などがあります。

これは日本年金機構が挙げた4つの理由のうち、「受給者の届け出漏れ」とまったく同じであり、請求(届け出)を忘れなければ、保険金(年金)を受給できたのです。

このような複雑ゆえの弊害は、年金制度より生命保険の方が、深刻ではないかと思うのです。

その理由として会社にお勤めしている間は、年金に関する手続きの大部分を、会社が代わりにやってくれるので、年金制度についての知識がなかったとしても、届け出の忘れは生じにくいと思います。

しかし生命保険に関する手続きは、誰かが代わりにやってくれる事はないので、自分が加入している生命保険についての知識がなかった場合には、請求忘れなどが生じやすくなるのです。

中田さんはブログの最後で、「社会の仕組みはすべからくシンプルが望ましい」と指摘しております。

生命保険についてもまったく同じあり、しかも年金と違って生命保険は、加入する制度を自分で選択できるのですから、例えば共済系が販売している、シンプルな生命保険に加入したいところです。
posted by FPきむ at 20:11 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月10日

国民年金の保険料を滞納して、生命保険の保険料を支払うのは損である

厚生労働省が発表している、「平成26年 国民年金被保険者実態調査結果の概要」によると、国民年金の保険料を滞納している方の46.4%は、生命保険や個人年金に加入しているようです。

注:「生命保険に加入」が45.2%、「個人年金に加入」が7.3%、「両方加入」が6.1%になっております。

また国民年金の保険料を滞納している方が、支払っている保険料の平均額は、生命保険は月額で11,000円、個人年金は月額で14,000円になります。

平成29年(2017年)度の国民年金の保険料は、月額で16,490円になりますから、生命保険や個人年金の保険料の支払いを止めておけば、納付できたと思うのです。

しかし上記の調査結果を見るかぎりでは、国民年金の保険料を滞納している方の半数くらいは、生命保険や個人年金の保険料の支払いを止めずに、国民年金の保険料を滞納する方を選んだと推測されます。

こういった行為は次のような理由により、損をする可能性が高いので、止めた方が良いと思うのです。

(1)滞納すると財産を差し押さえられ、延滞金が徴収される
厚生労働大臣は国民年金の保険料を滞納している方に対して、期限を指定して督促状を送付し、その期限内に納付しない場合には、財産(給与、家、預貯金など)の差し押さえができます。

またこのように督促をした場合は、保険料に加えて年14.6%(納期限の翌日から3ヶ月が経過するまでは年7.3%)の、延滞金を徴収するのです。

その一方で、生命保険や個人年金の保険料を支払わなかったとしても、このような厳しい処置をされる事はなく、保険契約が失効するくらいだと思います。

また4月7日のブログに記載したように、失効から原則として3年以内に手続きをすれば、保険契約を復活できるのです。

(2)国民年金は返戻率が高く、金融商品として魅力がある
平成29年(2017年)度の国民年金の保険料は、上記のように月額で16,490円になります。

そのため20歳から60歳まで、滞納期間がなかった場合には、だいたい7,915,200円(16,490円×12ヶ月×40年)の、保険料を納付するのです。

また滞納期間がなかった場合には、原則65歳から満額の老齢基礎年金を受給でき、その金額は平成29年(2017年)度額で、779,300円(月額で64,941 円)になります。

厚生労働省が発表している、「平成28年簡易生命表の概況」によると、65歳の平均余命(65歳の方が平均してあと何年生きられるか)は、男性は19.55年、また女性は24.38年になります。

そのため平均的には次のような金額の老齢基礎年金を、生涯に受給する事になるのです。

【男性】
64,941 円×12ヶ月×19.55年=約15,235,158円

【女性】
64,941 円×12ヶ月×24.38年=約18,999,138円

これらのデータを元に、「生涯に受給する老齢基礎年金の平均額÷生涯に納付する保険料×100」で、国民年金の返戻率を算出すると、次のような数字になるのです。

【男性】
約15,235,158円÷7,915,200円×100=約192%

【女性】
約18,999,138円÷7,915,200円×100=約240%

生命保険や個人年金の返戻率については、それぞれが加入した時期などによって変わってきます。

ただ特に女性の場合は、国民年金の返戻率より低い場合が多いと思うので、国民年金は金融商品として魅力があるのです。

(3)滞納を続けると納めた税金が、自分の元に戻ってこなくなる
このように国民年金の返戻率が高いのは、税金が投入されているからであり、例えば老齢基礎年金の2分の1は、税金を財源にしております。

そのため加入者から徴収した保険料と、その運用益を財源にしている生命保険や個人年金よりも、有利な設計になっているのです。

また国民年金の保険料の滞納を続けて、老齢基礎年金を受給できなくなった場合には、給与から控除されている所得税や、買い物のたびに納めている消費税などが、自分の元に戻ってこなくなります。

以上のようになりますが、例えばテレビを見ていると、有名なタレントさんを起用した生命保険会社の広告が、頻繁に放送されております。

つまりマスコミにとって生命保険会社は、有力なスポンサーになるため、悪口や批判を言いにくいのです。

それに対して年金の支給漏れなどが発生すると、マスコミは強い口調で日本年金機構を叩きます。

そのため国民年金より生命保険や個人年金に対して、良いイメージを持ってしまうのかもしれませんが、(2)のように数字で比較してみると、国民年金は決して悪いものではないのです。

また生命保険会社も日本年金機構と同じように、定期的に保険金の支給漏れを発生させている事実を、忘れてはいけません。

そうはいっても国民年金の保険料の納付を優先して、生命保険や個人年金が失効するのは困るという方がいるかもしれません。

そのような場合には生命保険や個人年金を、例えば払済保険(3月26日のブログを参照)にして、保険料の支払いを止めるという方法があります。

その他にも保険料の支払いを止める、いくつかの手段があり、この詳細については4月16日のブログを参照して下さい。
posted by FPきむ at 20:39 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする