2019年06月15日

現役世代が年金保険料で高齢者を支え、高齢者が銀行で現役世代を支える

令和元年(2019年)6月6日の日本経済新聞を読んでいたら、外貨建て保険、18年度の苦情3割増 リスク説明不足と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『主に銀行窓口で販売される「外貨建て保険」をめぐり、契約者からの苦情が平成30年度に前年度比34・6%増の2543件に上ることが12日、分かった。生命保険協会が近く公表する。直近6年間で4・3倍に増え、歯止めが利かない状態だ。

商品開発を担う生命保険業界と販売を受託した銀行業界の間で責任の所在があいまいになり、強引な営業活動が抑制されにくいことが背景にありそうだ。

生保協が生保各社に実施したアンケートによると、30年度に受け付けた外貨建て保険への苦情は「元本割れの可能性を十分説明しなかった」などリスク開示が不十分というものが7割を占め、契約者の年齢は60歳以上のシニア層が大半だ。

各社が保有する外貨建て保険の契約件数は30年度までの6年間で6・5倍に増え、市場規模の拡大とともに苦情も増加している』

『金融業界に詳しい帝京大経済学部の宿輪純一教授は「元凶は長引く低金利だ。手数料が高い外貨建て保険はどうしても売りたくなる」と指摘する。

生保は国債などで運用する円建て商品が売りにくくなり、銀行は本業の貸出業務で利ざやを稼げない。強引な営業は次の稼ぎ口を探して試行錯誤した結果ではある。

ただ、契約者の不信感が高まれば中長期的には収益源を潰すことになりかねず、銀行と生保が自ら営業姿勢を改める必要がある』

以上のようになりますが、平成30年(2018年)度の外貨建て保険に関する苦情は、前年度比で34.6%増の2543件に上り、また直近6年間で4.3倍に増えたそうです。

苦情が増え始めた6年前は、日銀が2%の物価上昇を目標にして、「量的・質的金融緩和」(異次元緩和)を始めた頃だと思います。

この影響によって金利が下がり、銀行は本業の貸出業務で利ざやを稼げなくなったため、高い手数料を得られる外貨建て保険の販売に、力を入れ始めたようです。

また外貨建て保険は円高が進むと、元本割れが発生する可能性があるため、それについての説明が必要なのですが、特にシニア層の契約者が十分な説明がなかったと、銀行に対して苦情を寄せているのです。

このようにシニア層の契約者の苦情が多いのは、住宅ローンや子供の教育費などで金銭的な余裕がない現役世代より、お金を持っている高齢者の方が、銀行からの営業が多いからだと思います。

ところで令和元年(2019年)5月30日の産経新聞を読んでいたら、紙の通帳を原則廃止へ 三菱UFJ銀行と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『三菱UFJ銀行が、6月10日から新規に口座を開設する際に、原則として紙の通帳を発行せず、パソコンやスマートフォンで閲覧できる「デジタル通帳」を利用してもらうようにすることが30日分かった。

インターネットバンキングの普及に伴って、ニーズが減っていることに対応する。希望者には従来通り、紙の通帳を無料で渡す。

三井住友銀行が平成28年から同様の取り組みを始めており、大手行の間で通帳のデジタル化への動きが広がってきた。

銀行は通帳を発行すれば、1口座当たり年200円の印紙税を負担する。長引く低金利で厳しい収益環境が続く中で、経費削減を進める狙いもある』

以上のようになりますが、長引く低金利により、本業の貸出業務で利ざやを稼げなくなった一部の銀行が、少しでも経費を削減するために、紙の通帳の廃止を始めたようです。

これに加えて一部の銀行は預金者から、銀行口座の維持手数料を徴収する案を、検討しているという話もあります。

ただ現在のところは、紙の通帳の廃止を始めたのは一部の銀行だけであり、維持手数料の徴収はまだ実施されておりません。

これらを実施しなくても大丈夫な理由のひとつは、銀行が高い手数料を得られる外貨建て保険や投資信託を、多くの高齢者が購入して、銀行の経営に貢献しているからだと思います。

公的年金は現役世代から徴収した保険料を、高齢者に対して支給する年金のために使うという、世代間扶養の仕組みで成り立っております。

その一方で銀行では、高齢者から徴収した高い手数料を、現役世代が利用する通帳などのサービスの原資にしているのですから、公的年金とは逆の世代間扶養が成り立っていると考えられます。

ですから銀行に行った時に、外貨建て保険や投資信託を購入している高齢者を見かけたら、両手を合わせて感謝の気持ちを伝えましょう。

おそらく変な奴が近づいて来たと思い、急いで逃げてしまうと思いますが…(笑)。
posted by FPきむ at 20:18 | 保険について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月04日

マイナンバーカードを保険証の代わりにできる、改正健康保険法が成立へ

令和元年(2019年)5月15日の時事通信を読んでいたら、改正健保法が成立=マイナンバーカードが保険証に−扶養家族、国内居住に限定と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『マイナンバーカードを健康保険証として使えるようにする改正健康保険法などが15日午前、参院本会議で自民、公明、立憲民主、国民民主各党などの賛成多数で可決、成立した。

利便性を高め低迷するカード普及率を向上させるとともに、受診時の本人確認をより確実に行えるようにするのが狙い。2021年3月からの施行を目指す。

改正法はまた、外国人労働者の受け入れ拡大に対応し、健康保険が適用される扶養家族を原則国内居住者に限定する規定も盛り込んだ。医療費の抑制や不正利用の防止が目的。

マイナンバーカードの保険証利用では、医療機関の窓口で、カード裏面のICチップの情報を機器で読み取り、保険診療の支払い審査機関への照会などを通じて患者の保険資格を確認できるようになる。

制度が浸透すれば、健康保険組合などが保険証を発行する必要性も薄れる』

以上のようになりますが、最近は外国人による健康保険や国民健康保険の不正利用が問題となり、週刊誌などによく取り上げられております。

その手口とは例えば海外の病院などで、診療を受けたように見せかける領収書を偽造し、それを申請書に添付して、海外療養費(本人負担の1〜3割を除いた、医療費の7〜9割が払い戻される制度)を請求するというものです。

こういった不正を防止するため、健康保険の被扶養者にできる家族は、原則として国内居住者に限定する規定を、健康保険法の中に盛り込むようです。

ただ海外赴任者に同行する家族や、海外の大学に留学する学生など、国内に生活基盤があり、いずれ日本に戻る可能性が高い場合には、例外的に健康保険の被扶養者にできます。

そのため健康保険の被扶養者にできる家族が、国内居住者に限定されても、日本人への影響は少なそうです。

もう一つの改正点はマイナンバーカードを保険証の代わりとして、病院などの窓口に提示できるようにするものです。

このような改正を実施する理由のひとつは、マイナンバーカードを普及させる事のようです。

平成30年(2018年)12月時点において、マイナンバーカードの交付枚数は1,564万枚、交付率は12.2%ですから、かなり低迷しております。

しかも同年10月に内閣府が実施した調査によると、53%くらいの方が「今後も取得する予定はない」と回答しているようです。

これだけ普及が進まないと、政府は色々と対策を考えたくなってしまいますが、マイナンバーカードを保険証の代わりとして使えるようになっても、普及が進むとは思えないのです。

保険証をどこかで紛失したり、入社したばかりで保険証が手元になかったりした時には、便利かもしれませんが、そんなシチュエーションが人生に何度もあるとは思えません。

またマイナンバーがわかれば良いのなら、通知カードでも十分だと思うのですが、これは廃止が検討されているのです。

この理由のひとつは保険証と同じように、マイナンバーカードを普及させる事のようです。

これらを見ていると政府のマイナンバーカード推しは半端なく、また露骨すぎると思います。

個人的にはマイナンバーカードの普及のカギになるのは、年金だと考えております。

マイナンバーと基礎年金番号が紐づけされたため、平成30年(2018年)3月から、年金の手続きがマイナンバーでも可能になりました。

一般的にはまだあまり知られていないと思いますが、これは意外に便利ではないかと思います。

その理由として例えば年金関連の手続きをしたいけれども、勤務先に年金手帳を預けているため、書類に記入する基礎年金番号がわからない方がおります。

こういった時にマイナンバーカードがあれば、勤務先から年金手帳を返してもらわなくても、手続きが可能になるのです。

もちろん今は通知カードでも良いのですが、これが廃止されて年金手帳が手元にない場合には、マイナンバーカードがあると手続きがスムーズになるため、普及のカギは年金だと思うのです。
posted by FPきむ at 20:02 | 公的保険の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする